しばらくタンゴについて語ろうと思います。
タンゴを語る前に、タンゴの名曲『エル・チョクロ』をティタ・メレージョで聞きくことにします。
この歌詞の中でタンゴの【おいたち】と【本音】が唄われています。
歌詞の内容は次のようなものです。
ちょっとふざけた伊達男のこのタンゴとともに
私の場末に大きな望みの翼がはばたき
このタンゴとともにタンゴが生まれ
空をかざしながら薄汚い泥地をあとにした。
奇妙な愛の誓いが抑揚をつけ
希望の他に定めのない道を切り開いた
怒りと悲しみと信頼と欠如の混合物が
いたずらっぽい無邪気なリズムで泣きながら。
不吉なその音符の奇蹟によって
思いもよらず、売春婦や情婦が生まれ
水たまりの月影や、腰をゆする下町ぶりや
愛し方の荒々しい悶えが起こった。
愛するタンゴよ、お前を思い起こす時
私は踊り場の敷石が揺れるのを感じ
過去がつぶやく声を聞く。
今はもう、母に何もしてやれない私だが
バンドネオンの音色にお前の歌が生まれるとき
母がしのび足で私にキスしに来たような気がする。
カランカンフンファと、お前の調べは
旗を掲げて海を渡り
ペルノー酒の中に
パリとアルシーナ橋を混ぜ合わせた。
お前は警官やイロ女の仲間だった
ヒモやアマっ子の産婆にさえなった。
お前のおかげで、道楽息子や老いぼれや
やくざや貧乏人が
お前の宿命とともに産声をあげた。
スカートとミサとカンテラ
ナイフの匕首が長屋の中に燃え
私の心に火をつけたのだ。