この表題と前編からの流れで、後編の話がだいたい想像できると思う。
わざわざ書くまでもないような展開だが、秋らしい話題?として書き残しておこうか。
数日後、現場を確認した依頼者から電話が入った。
契約に沿った仕事をしたので、依頼者からは「問題なし」「ありがとう」の声が聞けるものとばかり思っていた。
しかし、依頼者は私の思いとは逆に、「部屋に何かがいる!」と興奮状態。
ちょっとパニックっていた。
それを聞いた私は、「何言ってんだ?」と、依頼者の言っていることが理解できなかった。
「何かがいる!」と言われても、私は何も心当たりがない。
「作業を終えて退室したときは、間違いなく部屋は空っぽになっていたはず・・・なのに、何かがいる・・・?
「野良犬が野良猫が入り込んだか?」
「それとも、虫の類か?」
とりあえず、その正体を知りたくて、依頼者に細かく質問をした。
腐乱現場では、ウジ・ハエが後から湧いてくることはあるが、どうもその類ではなさそうだった。
依頼者は、驚きのあまり、その正体を確かめないまま玄関ドアを閉めていた。
私は、もう一度中に入って確認してもらいたかったが、「恐くて入れない」と言う依頼者に無理強いはできなかった。
仮に、モノの正体が野良犬や野良猫の類で、依頼者に危害を加えるようなことがあってはマズイし。
「んー、何だろう・・・」
私はモノの正体を全く想像できなかった。
ただ、怖がる依頼者を放っておく訳にもいかないし、「正体を知りたい」という好奇心もあったので、私は現場に行くことにした。
私が現場に到着したとき、既に依頼者は退散していた。
私は、まず中の音に耳を澄ました。
特に、音らしいが音は聞こえなかった。
次に、玄関ドアをノック。
これにも反応がなかった。
それから、片手に棒状の工具を持ち、ビクビクしながらも気持ちを戦闘モードに切り替えた。
そして、意を決して玄関ドアを開けた。
「ん!?」
何もないはずの床に、何かが見えた。
驚いた私は玄関ドアを勢いよく閉めた。
確かに依頼者の言う通り、畳の上に不気味な何かがいた。
私は、ドキドキする心臓を静めるためと、頭を整理するために、しばらく外で小休止した。
「犬猫ではなさそうだし・・・爬虫類系にも見えたが・・・亀?・・・まさかな・・・じゃ、あれは何だ?」
いつまで考えても、私は答がだせなかった。
考えてても仕方がない。もう一度、意を決して、私は玄関ドアを開けた。
畳の上に、こんもりとした何かがいる。
ウロコ系の爬虫類、亀みたいにも見える。
私は、爬虫類が大の苦手!寒気がしてきた。
それでも、勇気を振り絞って近づいた。
そして、謎の物体をよく見た。
「な~んだぁ」
近くでよく見てみると、それはキノコだった。
畳の腐った部分にキノコが群生していたのだ。
大小一つ一つの傘がウロコのように見え、全体として結構な大きさの爬虫類のような形を成していたのであった。
私は、一気に気が抜け、同時に安堵した。
そして、依頼者に電話して、正体がキノコであることを伝えた。
驚きの余韻が残っている依頼者は、理解し難いようだったが、丁寧に説明した。
それにしても、キノコの成長は凄い!
わずか数日で、ここまで群生するなんて。
私は、現場に来たついでにキノコを片付けて行くことにした。
キノコは根を張っている訳ではないので、取り除くのに大した労力はいらなかった。
「このキノコは食える種類かなぁ」と、くだらないことを考えながら作業。
「たくさん採れたら売れるかなぁ」とバカな冗談を思いついた時、大事なことに気がついた。
「今、このキノコを片付けても、また生えてくる可能性は充分あるな・・・ってゆーか、生えてくるに決まってる!」
「だったら、今片付けても意味ないじゃん!」
私は、キノコ狩りを中止して現場を後にした。
それからしばらくの間は、キノコのその後が気になった。
「あの勢いだと、とんでもない量になるに違いない」
仕事に関係ないので、見に行きい好奇心を抑えた私だった。
過ごしやすい季節になり、心身ともにだらけてきた。
どうしたらシャキッとするだろう。
私にとってキノコは、旨くもマズくもないような食べ物。
そんなキノコでも大きな生命力を持っている。
たまには、キノコを食べて元気だそうかな。
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2006-09-19 09:04:22
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