きれいに晴れ渡った青空が広がる気持ちのいいある日の午前。
現場は都内某所の高級住宅地。そこに建つ高級マンション。
そのマンションに住人達は、どの人も裕福そうで、私の単なる先入観かもしれないが、どことなく品の良さを感じる人達ばかりだった。駐車場の車も高級車ばかり。
それを当たり前のように乗っている。
依頼された仕事とは言え、私ごときが出入りするのも申し訳ないような気分がする程であった。
そのマンションの高層階の一室で独り暮らしの年配女性が腐乱状態で発見された。キッチンで倒れて、そのまま亡くなったらしい。
依頼者は、故人の息子。
「始めから、施行できる装備できてくれ」
とのことだったので、電話で聞いた現場状況から判断して、それに合わせた作業仕様で出向いた。
見積りのため部屋入ったら、いつもの悪臭はするものの、間取りは広々していて窓から見える景色もよく、置いてある物も高そうな物ばかりだった。
とりあえず、見積書を書いて、内容の説明に入ろうとしたら、依頼者は
「全てお任せしますから、そのまま作業に入って下さい」
と金額や作業内容を詳しく聞こうともしない。
「せめて料金だけでも了承もらわないと」
と金額を伝えたら、
「いくらかかってもいい」
「こんな仕事をお願いするのだから、高めにしても構いませんよ」
と寛容かつ丁寧な対応。好意に甘えて、少し高めに見積書を書き直して、作業を開始した。
「一体、どんな仕事をして、どのくらいの収入があればこんな高級マンションに住めるのだろうか・・・。」
と羨ましいやら感心するやら。自分の暮らしとの格差に複雑な思いを抱えながら作業を進めて無事完了。
帰り際も、依頼者男性は
「ありがとうございました」
と丁寧に礼を言ってくれた。礼儀正しく、感じのいい依頼者だった。
・・・同じ日の午後、千葉県某所の市営団地で見積依頼があった。
大規模な老朽団地で、間取りも2DKと狭い。こちらは特殊清掃の依頼ではなく、遺品回収(ゴミ処分)の依頼(家主は病院で死去)。
部屋の中は汚れて散らかり、生活用品とゴミの区別がつかないくらいだった。
遺族は部屋にある物の買い取りを強く希望していたが、どれもこれも、とても買い取れるような価値がある物ではなく、買い取りは全て断った。
しかし、執拗に
「これはまだ使える。これはまだ新しい。これは欲しがる人がいるはず。」
等と言ってしつこかった。しかも、私を業者扱いして横柄な物言いで。
更に、実際の遺品回収費用を見積もったら、細かい値引き交渉に入ってきて、どうにも話が進まなかった。少々の値引きは仕方がないが、遺族の希望する価格と私の提示した料金にあまりに格差があったし、その態度も気に入らなかったので、その場は私の方から断って引き上げた。
問題発言に発展する前に締めるが、その日は一日のうちに午前と午後に分けて二軒の集合住宅に訪問し、二つの遺族と接した訳だが、この大きな格差に思うこと感じることが多い私であった。
トラックバック 2006/06/10 08:49:22投稿分より
たまたま裕福&おおらかな人と貧乏&こすい人に同じ日に当たってしまって格差を感じただけであって、一般論として当てはめるのはおかしいと思います。
まぁ結局、お仕事してる人間としては金払いが良いほうが好きですよね。
礼儀がない人間は、それなりの収入。礼儀が分かる人間はそれなりの収入。
つまり、礼儀の分からない人間を使う気にならない。礼儀の分かる人間にはサポートをしてやろうという気持ちになる筈。
コレ、自然の摂理ね。類友の発展形。
全て自分に返って来るもんです。世の中捨てたもんじゃない。
金持ちで礼儀知らずは、親の真の愛情と教育の欠如の結果。結果金はあってもその他は持ち合わせておらず。嗚呼、何たる不幸。
やってみたいかも
一方もう一つ。金の穴埋めは非常に難しいが、人の穴埋めはいくらでも出来るという格言を思い出した。人の生死を扱う職業であるからこそ、普段気づかず、金重視の判断を下すのが常識とされるその社会通念の異様さが浮き彫りになるのかもしれない。
すんませんバカが偉そうにwww
そのことを自殺志願者は考えてほしいものです。
変に延焼させるのもアレですが、
情報なんてあちこちで駄々漏れですよ。
公務員しかり、様々な業者さんしかり、漏れない情報はないんですから。
気にするだけ損ですよ。
公然の秘密といった所はありますが、上の方は文章から察するとご存じなかったようなのに、職務上知り得たことを不必要に第三者に話すなんて、不愉快です。
私は公営住宅住まいではありませんが、こんな人が私の住む町の職員だったら、軽々しく個人情報を漏らされているのではないかと不安になります。
けれど数字として見た場合、今回のブログのようなものはありがちかと。
お金に余裕がないからこそ公営住宅の入居が許可されるわけですし。
「金持ちケンカせず」という言葉を思い出してしまいました。
知人が市役所の住民課に配属されていた時があるのですが、公営住宅は特殊な人も多いらしいです。
金銭面だけではなく・・・。
これももちろん全所帯の人がそうではないのは重々承知ですが。
考えてもみろ。世間というものはおまえらの命……人生のことなどまるで知ったことじゃない……興味があるのはおまえらの金……おまえらからいくら搾り取れるか……それだけだ……!無理からぬ………
とどのつまり、この世の正体は金の獲り合いその争いが終わるのは企業なら破産……個人なら死去……つまり存在する限り人は際限なく金を奪い合っていく……
それが……生きるということ……!
私は金持ちとは無縁ですが、私も値段もろくに見ずお願いするだろうと思います。だって、一生に何度あるかわからないようなお願いに対する正当な対価なんてわかりません。値切るための根拠なんか何も持ち合わせていませんし、そういう状況での値切りは失礼だと思うからです。
よく金持ち相手の商売は儲かるといわれますが、100円SHOPや激安飲食店が繁盛するケースもありますし。不特定多数の人と関わると色々嫌な思いはさせられるものです。
実際、最近は貧富関係無しに、文字通りの礼儀知らず(本当に知らない人達)が多いのも確かなような。
周りに手本となる礼儀正しい人間がいるかどうかと言う意味では金持ちの方が機会に恵まれているような気はしますが・・
※毎回楽しみに読ませていただいてます。
依頼主の家族はいかにも成金あがりって感じで、横柄な態度で接してきたんで
金持ちってなんだかなぁと思ってたんですが
一生懸命仕事をしてるところに、そのマンションのオーナーさん(品のある老人)が通りかかったとき
「がんばれ青年!」と言って肩をもんでくれたおかげで、お金持ちの人を嫌いにならずに済みました。
管理人さんの言うように、お金を持ってると心に余裕の出る人と、
持っててもまったく余裕がない人とで分かれるんでしょうね。
私、このお話とてもよくわかるなぁと感じてしまいました。
それと、それにコメントしていた皆さんの言う意見も、間違ってないというかいろんな人がいるんですよ(。>ω<。) それは、広い社会で沢山の人がいきていますから・・当たり前なんです
生活するフィールドが色々と別れているのも私なりに経験してきました。
私は裕福には暮らしてきていませんでしたが(小さい頃、父が突然病死したので)何も欲をかかないうちに、素晴らしい人と出会い結婚しました。
すごく好きですぐに結婚したので(その人自身が大好きでしたので)何も知りませんでした
結婚後、その人はとても裕福なお家の方だったのですが自分がお金持ちだということは一切言わないんです、いつも謙遜しているんで(多分お金持ちの人はそれが普通だと思っているので自慢も見栄も張りませんし、得しようとか欲がないんです・・ほんとにいつもニコニコしています☆)私はそのような方たちに触れて本当にゆとりを持って人に迷惑もかけずに素敵に暮らしているなぁといつも勉強になります。
心にゆとりを持つということは生きるなかとても素晴らしいことで、貧乏でも裕福でもゆとりを持っている人は素敵に見えます
ただ、貧乏だとそんな余裕がなくなってくるというのは多少あることなのかなぁと思います。。
管理人さん、書きたいこと、伝えたいこともっとおありでしょうが、私はこの文章ですごく良く感じ取れました。
きっとそのように思われている方も多いはず
管理人さんの毎日のご苦労に頭が下がります。お身体に気をつけて頑張ってください(^ー^)
近所に、そんな人居ましたねぇ(故人ですが)。
お金が有ろうが無かろうが、人間性の問題ですなぁ…。
ウソだー
病院にいる間に掃除出来なかったのでしょうか?
私の義母義父はゴミ捨てられない主義だからたぶん両方亡くなった後は大変でしょう。お金に汚いのは見飽きてますから、管理人さんも今回は辛い仕事だったでしょうね。
"貧の盗みに恋の花"とはいいますが、
心は常に"貧者の一灯""貧の花好き"でありたいものです。
他人を見下し、横柄な態度をとる人間もいる。
貧乏でも「お金はこれだけしかありません」
と無様を承知で頭を下げる人間もいる。
受けてきた教育と環境の違いなのでしょうね。
でも貧乏でも身のまわりのことキチンとしてる人はいますけどね。
お金の問題ではなくて、その二つの遺族に後悔しない対応をすることができたかだけが自分に出来ることだと思います。口で言うのは易しいですが。
そうじゃない人もいますけどね。
貧しい時、辛いことがあった時、その人の本質が現れる。
それだけだと思います。
物質的に余裕が無い時にその人の本質が見える。
私はそう思ってます。
お金は大事です。それは否定しません。
腐乱死体、結構多いんですよ。それと、身内のいない方のご遺体も。例えばホームレスの方とかね。
腐乱死体にしても、身内の引き取り手が無いご遺体も、私は虚しいなー、と思います。亡くなったご本人は、どう感じながら亡くなったのかなー?って思います。命は儚いもの。なのに、あまりに残虐な事件などが多すぎて、ニュース見るたびにまたか!と悲しくなります。そして、この遺体はどこの葬儀屋に行くのだろう?と考えてしまう職業病の自分にも虚しさを感じたりしますよ。
でも、管理人さんのようなお仕事や葬祭関連業社などを経験されると色んな気づきはありますよ。
私は携わってみて良かったと思います。
と、いいつつ、本日辞めるんですけどね。
管理人さん、変なコメントに負けず、頑張ってください。
>その態度も気に入らなかったので
と在りますが、
もしも、相手が紳士な方だったら・・・。
と思うと、困ってしまいますね。
世の中って難しいですね。
でも、ろくに値段も見ないままで遺体処理をお願いする金持ちの人も、故人への思い入れの軽さが見て取れるような気もします。
格差というか、どっちもどっち。
>>裕福でも腐るまで気付かれないのは悲しいな・・・
きっとお金の使い方を間違えているのですよね・・・
ゲーテも「貧乏すれば心が鈍る」といってます。
洋の東西を問わずですね。
いくら貧しくても、すべての人がそうなるわけではないでしょうし、もちろん真逆な諺もありますが、
心の隅に置いておくのもいいかもしれませんね。
遅れましたが、いつも見ています。
お仕事頑張ってください。
出会わなければおそらく知りえなかったリアルな内容に、日々考えさせられている一人です。
劣等感もしくは優越感に揺れることのない人々には貧富の格差は関係ないと思います。
もちろん自分はまだまだなので目下努力中です。
あと、
>結局お金なんですかね
>なんかガッカリした
これは上のコメントで反論を受けているような意味ではないのでは。
大丈夫、貧しくても心が強く素晴らしい考えをもって生きている方々を何人も知っています。
世の中捨てたものじゃないですよ。
うーん。いつも考えさせられるブログ。
お仕事頑張ってくださいね。
肝に銘じておきたい言葉です
人間性と豊かさは比例しないとしても、裕福なお家で豊かな知性と教養を育まれると、きちんとした、ゆとりある振る舞いのできる人間として育つ可能性が高いのかもしれないですね。
日本にはカエルの子はカエルとか、瓜の蔓にナスビはならぬ、とか、厭なことわざも多いですが‥親がこうだから、家がこうだからと言い訳をせず、立派な人間になりたいと子どもが思えるような社会であればと思います。
お仕事がんばってください‥
心と懐は、異なると信じます。正比例することはあまりに理不尽とまで思います。
ですねぇ。
意識していないとなかなか難しいけど。
>なんかガッカリした
いくつかの解釈が出来ますが、
このガッカリを管理人さんへ当てたならば
管理人さんは慈善事業でやってるわけじゃありませんからね。
こういう仕事も無くてはならないですしね。
もう少し社会に出て色々な事を経験なさる事をお奨め致しますよ。
>なんかガッカリした
人の嫌がることをするんですから、それなりにもらわなきゃやってられないでしょ。
ボランティアじゃないんだし。
嫌ならご自分でやることです。
貧しいと必ず心が醜いかどうかはわかりませんが、貧しくある人でお金に対し執着心の強い方は多いと思いますし、裕福でなおお金に執着する人も多いと思います
ボロは着てても心は錦、良い言葉じゃないですか
心構えの一つとして、清貧で謙虚でありたいと思います
心が貧しいというのは如何なものかと...
そのほうが、なにやら、美徳感があるんじゃ
ないか、という話でしかすぎないような。
また、心豊か、心貧しい のクライテリアが
難しいから水掛け論。
少なくとも、お金にこだわらない生き方ができ
れば、心豊かになれるわけで。
(ここに、貧乏人でもお金にこだわらなければ
心豊かじゃないかと...)
うちの母親は、毎日『お金、お金』とわめいております。
さて、この母親が死んだらどうしてやろうか…
お金があって、余裕な状態で、表面的に礼儀があれば、「心がキレイ」かっつうと、そうとも限らないでしょう。
まあ礼儀はあったほうが、仕事はスムーズに進みますけど。心の美醜の問題とも言い切れないんじゃないすかね。
なんかガッカリした
ドイツのジロンカっていう会社の作っている商品で、半永久的に使える消臭アイテムがありますよ。
コレだけだとふ~んで終わりそうなんですけど、効果は凄いです。
とりあえず スメルキラー でググって見てください。たくさん出てくるとは思うんですけど、この手のニオイに限らず触媒分解するタイプの消臭なので効果は抜群ですョ。
お金がすべてではないが、心にゆとりがもてる程度のお金は稼ぎたいもんだ。
今回の記事はまた清掃会社の意外な面?を垣間見てしまったような気がします・・・
会社の人間、仕事をする人間、どんな言い方をしようと人であることに変わりはないわけですよね・・・
どんなことであれ、礼をもって接したいと思いました。
人間というものは、ある時は花よりも美しく
また、あるときは蛆にも劣るほど汚い生き物
だと実感いたしました。
私も僭越ながら応援させていただきます!!
ただ、遺族が亡くなった方を辱める様な行動を取るのはやっぱり・・・ねぇ?
ついつい毎日読んでしまう。
面白過ぎます。
管理人さん、文章がお上手!
プロの仕事っぷりも魅力。
こちらも勤労意欲が湧いてきます。
このブログを長く続けて下さいますように
孤独死して腐乱死体で発見されるんだなぁと実感。
そういえばご自身のお金の話は出てきませんが、やっぱりこの仕事は高給なんでしょうか?みんな興味があると思います。
新幹線に乗るときは、ちょっと足しても
グリーンに乗るって人がいます。
グリーンには、人を押しのけるような人とか、
騒いだり、人に迷惑かけるような人が
ほとんどいないからだそうです。
少しお金に余裕のある人の方が
心にも余裕があるのでしょうね。
むずかしいなぁ…
誰にも恥じないって、いかにも日本的。
わたしも日本人ですが。。
お金と人間性って切っても切り離せないですね…
言い得て妙だとは思っていましたが…
いやはや、猿ならぬ人間ですもの
貧しくとも心は錦を着飾りたいものですなぁ
むずかしいなぁ…
二番目にコメントされた方へ
管理人さんの何をご存知でそのようなコメントを・・・
(当たり前だけど)このような現実があることが悲しいですね。