筋肥大によって、基礎代謝量および運動時の消費カロリーが増大することを利用し、ダイエットをする場合、筋1kgの基礎代謝量は50kcal程度といわれています。
また、筋肉量が増加すれば、以前と同レベルのエクササイズを行ってもより多くの筋肉量がその運動に参加することになり、消費カロリーも大きくなるのです。
さらに、筋力強化によって負荷自体を増大させることも出来るために、更なるカロリー消費の増加が期待できるという効果も考えられることになります。
中性脂肪から遊離脂肪酸への分解は、体内で常に起きていている生理現象のひとつです。その際、エネルギー源としての脂肪は常に血液中に存在し、最初に運動で用いられるエネルギー源は血中の糖分(ブドウ糖)由来のもの(解糖系によるエネルギー)だといわれています。
糖分は迅速にエネルギーに変換されるため、運動初期、とくに運動開始時に急激に必要エネルギーが増大したときに用いられやすく、その後、遊離脂肪酸からエネルギーが作られていき、運動が安定していくと徐々にそちらに切り替わるという仕組みになっているのです。
一度分解された遊離脂肪酸でも、使われなければ再び中性脂肪に合成されてしまいます。カプサイシンやカフェインなど、中性脂肪から遊離脂肪酸への分解を促進することが知られている化学物質も、摂取するだけでは遊離脂肪酸自体は消費されずに余剰の状態で再び中性脂肪に戻っていくので、減量には寄与してくれません。
交感神経系が活発化することで基礎代謝量が上昇する効果は期待できますが、その効果は僅かだといわれています。また、そうした物質の持つ興奮作用でエクササイズの効率を高めるとも考えられなくはありませんが、精神作用物質の効果で無理に身体に負荷を掛けることは決して安全とはいい難いことも知っておくべきでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、脂肪がエネルギー源として使われる割合が最も高いのは安静時なのです。高強度運動では筋グリコーゲンや肝グリコーゲン(糖質)が主に消費されます。グリコーゲンが枯渇した状態で食物を摂取すると、食物中の糖質はグリコーゲンの補充に使われることになりますが、グリコーゲンが充足した状態で食物を摂取すると、食物中の糖質は脂肪の合成に使われることになってしまうのです。 過剰な「脂肪の合成」こそがダイエットの最大の敵なのです。
以上のことから、高強度運動を行った場合、運動によって直接消費される脂肪は少ないものの、次回の食事はグリコーゲンの補充に使われ、合成される脂肪は少なくなります。その一方で、安静時(非運動時)には体脂肪が主なエネルギー源として使われるため、結果として体脂肪も減少する(食事のエネルギーが運動と基礎代謝の消費エネルギーより少ない場合)ことになるわけです。
一方、低強度運動で脂肪のみ使ったと仮定しても、筋・肝グリコーゲンが減少していない状態で摂った糖質はほとんど脂肪の合成に回されてしまうことになりますから、高強度であっても低強度であっても、体脂肪の増減は摂取カロリーと消費カロリーの差のみに依存することになるのです。
【補足】ここで簡単にグリコーゲンについて説明しておきます。グリコーゲン (glycogen) とは、多数のα-D-グルコース(ブドウ糖)分子がグリコシド結合によって重合し、枝分かれの非常に多い構造になった高分子です。動物における貯蔵多糖として知られ、動物デンプンとも呼ばれることもあります。植物デンプンに含まれるアミロペクチンよりもはるかに分岐が多く8~12残基に一回の分岐という構造です(糖合成はDNAに支配されないため)。直鎖部分の長さは12~18残基、分岐の先がさらに分岐し、下図のような網目構造になっています。
グリコーゲンは肝臓と骨格筋で主に合成され、余剰のグルコースを一時的に貯蔵しておく役割を果しています。糖分の貯蔵手段としてはほかに、脂肪とアミノ酸という形によるものがありますが、 脂肪酸という形でしかエネルギーを取り出せない脂肪や、合成分解に窒素代謝の必要なアミノ酸と違い、グリコーゲンは直接ブドウ糖に分解できるという利点があるのです。 ただし、脂肪ほど多くのエネルギーを貯蔵する目的には向かず、食後などの一時的な血糖過剰に対応しているに過ぎません。
グリコーゲンの合成・分解は甲状腺、膵臓、副腎がそれぞれ血糖に応じてチロキシン、グルカゴン及びインスリン、アドレナリンなどを分泌することで調整されています。 なお、肝臓で合成されたグリコーゲンと骨格筋で合成されたそれとでは分子量が数倍異なり、前者のほうがはるかに大きいといわれています。
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