かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 234(中国)

2019-05-19 17:40:43 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の旅の歌31(2010年8月実施)
    【砂の大地】『飛天の道』(2000年刊)185頁~
     参加者:H・A、T・S、藤本満須子、T・H、鹿取未放
     司会とまとめ:鹿取 未放

             
234 羊雲のひろがりやまぬゴビの秋玉片も骨片も砂として冷ゆ

      (当日意見)
★「ひつじぐも」と読んだ方が景に広がりが出る。(藤本)
★「ひつじぐも」だと字余りになってもたもたする。「よううん」と読んだ方が漢文口調で締まる
 し、昔からの戦いの苦しみを歌った漢詩の伝統にも気分上接続しやすいと思います。行き倒れに
 なった僧侶や商人など旅人の骨ももちろん交じっているだろうけど、主眼は戦死した兵士ではな
 いですか。(鹿取)
 

            (まとめ)
 上の句で茫漠とした景を出している。初句は「よううん」と音で読んだ方が大陸的な秋の景の感じがよく出るのではないか。和田(ホータン)産出の玉(ぎょく)は昔から尊ばれていたが、武帝の使者張騫が遠征の折発見し武帝に献上したと伝えられている。陽関、玉門関とも紀元前94~93年頃武帝が設けた関所だが、玉門関は和田から玉が入ってくるのでこう呼ばれたそうだ。そして実はシルクロードより以前に玉を運ぶための〈玉街道〉が存在したらしい。しかし現在では玉は採り尽くされ、ブルドーザーで河原を浚ったりしている映像をテレビなどで見ることがある。
 この歌では玉は粉々に砕けて砂漠の砂に混じっている。また、戦いに死んだ古来からの兵士の骨も同様に粉々になっている。宝石も人骨も見分けが付かない砂となって冷えている。玉片も骨片もと並列したところに凄みもあり哀れもある。(鹿取)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする