かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 381(中欧)

2020-03-30 19:10:36 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠53(2012年6月実施)
  【中欧を行く 虹】『世紀』(2001年刊)P105~
      参加者:N・I、崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:藤本満須子(急遽代理のため書面のみの参加)
司会と記録:鹿取 未放


381 一夜寝てプラハの街は雨ながら太虹立てり見つつ離(か)れなむ

               (レポート)
 プラハ旅行詠の冒頭を飾る歌だ。さあこれから、プラハの街を見てまわるんだ。ホテルでとまり一夜あけて、見るとプラハの街は雨に濡れている。しかし大きい虹が立っている。その虹を見ながらこの街を離れていこう。
「雨ながら」「太虹立てり」に作者の思いがうたわれている。この国やプラハの歴史への諸々の感慨を持ちつつ明るい希望を見いだしている歌。(藤本)
  プラハ:チェコ共和国の首都。中世以来のあらゆる建築様式を残す。ヨーロッパでもっとも中      世の面影を色濃く残す。ボヘミア盆地の中心に位置し、交通文化の中心地。自動車、      織物、化学工業、ガラス工芸品(ボヘミアグラス)


                (当日発言)
★「一夜寝て」の入り方が唐突でなくてうまい。レポーターが言うこれからプラハの観光が始ま
 るというのは違うのではないか。(慧子)
★レポーターが「プラハ旅行詠の冒頭を飾る」と言っているのは違う。プラハはこの日発つのだか
 ら。雨が降っている状態で既に太い虹が立っているのを捉えているところが面白い。(鹿取)


               (追記)(2013年11月)
 よく読むと「プラハ旅行詠の冒頭を飾る」歌には違いない。しかしそれに続くレポートの文言が「さあこれから、プラハの街を見てまわるんだ。」は違う。つまりこの一連は雨の中の虹を見ながらプラハの街を離れるところから書き起こしているのだ。歌集巻末にある初出一覧を見ると、中欧の旅行詠は四種類の雑誌に発表されているのをまとめたものと分かる。それぞれの雑誌に独立してまとめられているものを歌集にそのまま再録したため、歌集で読むと時系列が前後している部分がかなりある。(鹿取)

コメント
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