かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 166

2021-02-19 19:27:00 | 短歌の鑑賞
  ブログ版 渡辺松男研究 21 2014年10月 
   【音符】『寒気氾濫』(1997年)70頁~
   参加者:石井彩子、泉真帆、鈴木良明、曽我亮子、N・F、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放


166 平面はぐにゃぐにゃとなることもなきわがQUARTZの秒針の影

         (レポート)
 「物質が存在すると時空が曲がる」(アインシュタインの一般相対性理論)が念頭にあって、この歌が詠まれている。この理論によると物質の質量(重さ)が大きいほど周囲の時空は大きく曲がるが、正確な時間を刻むはずのQUARTZ腕時計にも、この原理が及んでいることを作者は感じている。さすがに、空間(平面を含む)がぐにゃぐにゃになる「空間の曲がり」を見ることはないが、「時間の曲がり」=「時間の遅れ」を「秒針の影」に見ているのだ。 (鈴木)
  ※(1)辞書によると、QUARTZとは水晶に一定の電圧を加えると決まった時間内に決まった回
    数、正確に発信するという特性を利用した、水晶発振式時計である。水晶の温度が高くなると
    狂いが生じてくるので、大型の保温装置を必要としたが、六十四年の東京オリンピックのと
    き、電流の流し方で温度を調節できる小型化に成功し、腕時計も可能とした。
  ※(2)相対性理論には「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」がある。
     前者は、「物体が等速直線運動を行っている場合」にのみ当てはまる理論であり、これに修
      正を加えて加速度運動(重力)にも当てはまるようにしたものが、後者。



       (意見)
★ダリの絵でこういうのがありますね。時計がぐにゃっとして垂れ下がっている。あの絵の意味は
 よくわからないのですが、あの絵に近いものを感じます。(N・F)
★「時間の固執」でしたっけ?松男さん、ダリが嫌いで僕はマグリットが好きですといろんなとこ
 ろで言っている。これも、僕の時計はダリのようにはならなくて、秒針の影もしっかり見えてい
 るって。マグリットの端正な感じが秒針の影のイメージにはあるのでしょうか。ダリはよく分か
 らないから言えないけど、冷静に技巧駆使した結果の絵は情念のどろどろが出てるような気がす
 る。ああいう情念の放出の仕方が、松男さんは嫌なのかな。(鹿取)
★ダリの絵、「記憶の固執」じゃないですか。普通時間って直線ですよね。でも、ニーチェなんか
 循環していますよね。仏教にも循環がありますけど、そんなふうな自然の移り変わりや生まれ変
 わりって意味なのかなあ。(石井)

コメント
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