かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞

2020-06-19 19:03:15 | 短歌の鑑賞
     ブログ版清見糺鑑賞 4  
          かりん鎌倉支部  鹿取未放  


22 髭剃れば喉のほとけにあらわれて下元勉のようなとしより
           「かりん」94年10月号
 
 下元勉はウィキペディアによると1917年生まれの俳優で、復員後、劇団民藝の創立に参加。2000年83歳で死去。元妻は山田五十鈴などと出ている。作者より18歳年長になるが、作歌時は下元76歳の計算だが、リアルタイムで見て作歌した訳ではないからかなり以前から下元を「としより」として認識していたのだろう。
作者は老いることはほんとうに怖かったようだ。もちろん、肉体だけでなく頭脳が衰えていくことにも恐れを抱いていた。そこで作者がとった手段は、表現によって老いを先取りすることだった。第一歌集『風木悲歌』に既にその傾向は顕著に表れていた。
 この歌も表現されている歌と現実にはかなりのズレがあって、そのズレの部分に作者がこころの余裕を感じる余地があるのだろう。後年、癌と知ってから書かれた「死」の歌にもその傾向がある。表現において「死」や「老い」を先取りすることで自分はまだまだそこまではいっていないぞという安心感を得たかったのだろう。この歌、髭剃りの時の驚きはほんものだろうが、一方で老いることに様々の楽しみをみいだそうとしてもいたのだろう。「かりん」二十周年記念号(九八年五月刊)の自選五首のうちの一首に入っている。



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