かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞

2020-06-20 17:50:02 | 短歌の鑑賞
     ブログ版清見糺鑑賞 4  
          かりん鎌倉支部  鹿取未放  


23 性愛に朽ちてしまえよ来年はろくじゅうになるおとこの名前
             (94・12「新うしの会」会報11号)

「新うしの会」会報は九三年一二月に準備号が出て、九四年一月第1号を出した。丑年生まれ五名(寺戸和子、左海正美、出口順、羽田明美、鹿取未放)と小関祐子、清見糺の計七名の同人誌(間に多少の出入りがある)。45号(九七年一〇月)で終刊した。以下本稿では「うしの会」と略記。
 この歌は次の岡井の歌に影響を受けて作られているようだ。また、本歌取りというほどではないが、百人一首の相模の歌を面影にしている。

性愛のまにまに頽れゆきにしや岡井隆といふ青年は『歳月の贈物』(七八年)
 恨みわび干さぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 相模

 掲出歌は恋にではなく「性愛」に朽ちると言ったところ、惜しむのではなく朽ちてしまえといっているところが新味だろうか。もっとも、「朽ちてしまえよ」はやや捨て鉢な口吻で、本心は惜しむ気分に近いのかもしれない。あるいは朽ちても致し方がないという消極的肯定だろうか。また、「われ」の名ではなく、「来年はろくじゅうになるおとこの」名と客観的に詠んでいるのも工夫だろう。世間のどこにでもころがっている通俗きわまりない状況をことばの力でねじ伏せようとしているところが、この歌の手柄だろうか。

 

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