かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の221

2019-11-22 18:08:30 | 短歌の鑑賞
   ブログ版渡辺松男研究2の29(2019年11月実施)
     Ⅳ〈悪寒〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P145~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆    司会と記録:鹿取未放


221 冷蔵庫にそっと地球儀冷やすとき家族から遠く来てしまいたり 

         (レポート) 
 いったい人はどんな理由や目的があって地球儀を冷やすのだろう。これは不思議な一首だ。何かの比喩だろうか。「家族から遠く来てしまいたり」「地球」「冷」えるというと、宇宙にいる喩えだろうか、などなど無理やり何の比喩かと想像もしてみるが、上の句の「冷蔵庫にそっと地球儀冷やすとき」には比喩とは思えない現実味があるので鑑賞に困ってしまう。
 例えばこんなドラマを思う。………… リビングかダイニングか家族の集まる部屋に地球儀があった。主人公は地球の温暖化を憂いたジョークをとばし、冷蔵庫で冷やせばいいんだよと地球儀を冷蔵庫に入れてみせた。笑ってくれるかと家族をみると、〈なんてくだらないことやってんのよ〉と皆そっぽを向く。ああ、「家族から遠く来てしまいたり」と一人寂しく呟く。 …………この一首、まことにレポーター泣かせの歌である。(泉)

  (紙上参加)
 なぜ冷蔵庫でスイカではなく地球儀を冷やすのか、わからないけれど、確かにそうしたら家族とは離れてしまう感じはありそうで不思議な面白い歌。「さようなら家族、地球の皆さん。僕は地球の喧騒に疲れてしまいました。」というような思いだろうか。(菅原)


(当日意見)
★次の次の月に観賞する歌に今日口から鳥を飛ばしたことを家族に言いそうになったという意味
 の歌があって、同じような繋がりかなと。(鹿取)
★大好きな歌です。それこそ暗喩的なものかもしれないけど。人間って家族から遠くにくるって
 瞬間ありますよ、だから家族と冷たい関係ですとかとは全然違う。地球儀って中国があってロ
 シアがあってフランスがあって…自分が存在している。理屈ではなくてそれを冷蔵庫で冷やす。
 ああ、そうかって思いました。愛する家族から遠くきた、そういう根本的な存在の感じ。
   (A・K)


(後日意見)
 鹿取の当日発言の鳥を飛ばす歌は、「今日われは口から鳥を飛ばせしともうすこしで家族に告げそうになる」(『泡宇宙の蛙』157頁)(鹿取)



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