かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の222

2019-11-23 20:02:11 | 短歌の鑑賞
   ブログ版渡辺松男研究2の29(2019年11月実施)
     Ⅳ〈悪寒〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P145~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆    司会と記録:鹿取未放



222 ぞっくぞっくと悪寒するなりわたくしの何処を切りても鼠の列

(レポート)
 ①と②と③の解釈をしてみた。
解釈① 「鼠」には、こそこそと人に害をなすもの、良からぬことをする者の意味もある。その意味で鑑賞すると、「わたし」の中には、人に害をなす部分があることを認め、切っても切っても人に害を与える良からぬ己が出てくることに思わず悪寒を感じ、生きてゆくことは意図せず他者の害になっているという存在の哀しみを詠んでいる。
解釈② 「鼠の列」は遺伝子の配列を想起させ、科学が得た諸々の恩恵を受けて生きている自分を思うと、どこを切っても鼠から得たものばかりだと、これまで人間が行ってきたマウス実験を憂いつつ詠っている。
解釈③ もしもこの一連を渡辺松男が連作SF短歌として編んだとしたら? 前述した220番(鶏と睨みあってはおちつかず天高き日のフランケンシュタイン)の怪物フランケンシュタインから続く話になるだろう。また、フランケンシュタインには人間から造られたというストーリーのほかに、人間と動物を取り混ぜて造ったというストーリもあるらしい。だとしたらフランケンシュタインを造るときに使用した鼠ということか。
①②だろうか、③はさすがに飛躍し過ぎだろう。とは言え、作者がSF的な詠みを試作しているような印象を持った一連だった。(泉)


(紙上参加)
 風邪をひいて悪寒がするときの感じは、確かにちゅるちゅるもぞもぞ動きまわる鼠のようかもしれない 一読して、感覚的に即納得。すごい発見であり、表現力だと感嘆。(菅原)


(当日意見)
★下の句は七・六のリズムですね。塚本邦雄は結句六音が多いですが。菅原さんと同じで感覚的
 にとてもよく分かる。言われてみれば確かに悪寒がする時って、全身に鼠が詰まっているよう
 なもぞもぞと不愉快な感覚ですよね。(鹿取)
★よく分かります。「ぞっくぞっく」が効いている。渡辺さん促音便を使ったオノマトペが多いで
 すね。「ぞくぞく」では俗っぽいけど「ぞっくぞっく」にはオリジナリティがある。(A・K)
★米川千嘉子さんが松男さんのオノマトペには心が反映していると独自性を褒めていましたね。 
  (鹿取)
★「鼠の列」が素晴らしい。鼠を思いついても「列」とは言えない。ぎっしり詰まっている感じ
 がする。(岡東)











コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男の一首鑑賞 2の221 | トップ |  渡辺松男の一首鑑賞 2の2... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事