かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 64 

2023-06-21 10:54:30 | 短歌の鑑賞
  2023年版渡辺松男研究⑧(13年9月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)30頁~
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、高村典子、渡部慧子、鹿取未放 
     司会と記録:鹿取 未放


64 閉じられし屈葬の甕のなかに覚め叫ぶときエゴン・シーレなるなり

(当日意見)
★私けっこうエゴン・シーレが好きです。かなり強烈な絵ですけど。叫びをあげる
 ような感じの絵ですよね。渡辺さんの歌は、自分も甕の中で目覚めたらシーレの
 ように叫ぶんじゃないかという歌なのでは?(曽我)
★私はこの歌は渡辺さん自身の心象と思って読みました。そういうふうに読むとす
 ごく納得する。(高村)

 
     (追記)
 エゴン・シーレは、ごつごつしていて斑点があるような、普通には美しいと言えない人体を描いている。「意図的に捻じ曲げられたポーズの人物画を多数製作」、「死や性行為など倫理的に避けられるテーマをむしろ強調するような作品」(ウィキペディア)を描きました。画集を繰っても「屈葬の甕のなかに覚め叫ぶ」絵は見あたりませんでした。でもまあ、世界には柩の中に入れられてから生き返って中から柩をトントン叩いたとかいう例はけっこうありますね。
 作者は、シーレの「意図的に捻じ曲げられたポーズの人物画」から「屈葬の甕」の中の〈われ〉を着想したのかもしれません。甕の中で目覚めた〈われ〉は恐怖のあまり叫ぶ訳ですが、それは28歳という若さで病死したシーレ自身の口惜しさでもあるのでしょう。(鹿取)


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