2023年版渡辺松男研究⑧(13年9月)
【からーん】『寒気氾濫』(1997年)30頁~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、高村典子、渡部慧子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放
65 ネクロポリスは月のかたちの石に満ち人寿三万歳のわれは行く
(当日意見)
★実際こういった場所があるんですかね。それとも参考として書かれているような状態
のことをネクロポリスと言うんでしょうかね。(鈴木)
★実景とか具体的な場面ではないように思いますが。第一〈われ〉は三万歳なんだから
現実ではないでしょう。もちろん外国にはこの通りの巨大な墓があるかもしれないけ
ど、旅行している訳ではなさそうだし。でも読み手は景も〈われ〉もこの通りのもの
として一旦はリアルに受け止めないといけないし、私は書いてあるとおりに受け止め
るけど。(鹿取)
★崎尾さんが死者の都とも言ったけど、その意味の方が広がりが出ますよね。(鈴木)
★そうすると人間始まって以来の、それこそ恒河沙の数の人間が全部眠っている死後の
世界。でも三万歳というのは何なんでしょうね。クロマニヨン人は4万年くらい前で
したっけ?(鹿取)
★死者の都とか月の形の石に満ちというところが、とてもいいなと思いました。それか
ら渡辺さんはよくいろんなところへ行くなあと思いました。(笑)(高村)
★前の歌では狭いところに閉じこめられて甕の中にいたけど、今度はこんなに大きくな
って(笑)。ちまちましたところにずっといないのが渡辺さんらしい。連作で大小交
互にきているみたいだ。(鈴木)
★月の形だからけっして汚くなくって。月という漢字が読み手に浮かぶように選ばれて
いると思う。(高村)
★三万歳って思いついても、普通の人は読み手に受け入れられないだろうと思って使え
ないですよね。(鈴木)
★こういう言葉を矯めて詩にできる力業が渡辺さん、すごいですよね。(鹿取)
★しかも実感がこもっている。作り物って感じがまったくしない。(鈴木)
(追記)
Wikipediaによると「ネクロポリスとは、巨大な墓地または埋葬場所である。語源は、ギリシャ語の「nekropolis(死者の都)」。大都市近郊の現代の共同墓地の他に、古代文明の中心地の近くにあった墓所、しばしば人の住まなくなった都市や町を指す。」(一部省略)
もしかしたら、今、〈われ〉が三万歳なのではなく、人類滅亡後の世界を透視しているのかもしれない。三万歳になった〈われ〉がいるのは、死者の都=ネクロポリス。累々と人類の墓碑が広がっているのだ。しかしこの歌に身震ふほどの怖さを感じないのは、月の形の石で、ロマンがあるからか。月によって死が清浄に感じられるからか。月の形の石に満ちた景にこそ作者の独特の思いがあるのだろう。(鹿取)
【からーん】『寒気氾濫』(1997年)30頁~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、高村典子、渡部慧子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放
65 ネクロポリスは月のかたちの石に満ち人寿三万歳のわれは行く
(当日意見)
★実際こういった場所があるんですかね。それとも参考として書かれているような状態
のことをネクロポリスと言うんでしょうかね。(鈴木)
★実景とか具体的な場面ではないように思いますが。第一〈われ〉は三万歳なんだから
現実ではないでしょう。もちろん外国にはこの通りの巨大な墓があるかもしれないけ
ど、旅行している訳ではなさそうだし。でも読み手は景も〈われ〉もこの通りのもの
として一旦はリアルに受け止めないといけないし、私は書いてあるとおりに受け止め
るけど。(鹿取)
★崎尾さんが死者の都とも言ったけど、その意味の方が広がりが出ますよね。(鈴木)
★そうすると人間始まって以来の、それこそ恒河沙の数の人間が全部眠っている死後の
世界。でも三万歳というのは何なんでしょうね。クロマニヨン人は4万年くらい前で
したっけ?(鹿取)
★死者の都とか月の形の石に満ちというところが、とてもいいなと思いました。それか
ら渡辺さんはよくいろんなところへ行くなあと思いました。(笑)(高村)
★前の歌では狭いところに閉じこめられて甕の中にいたけど、今度はこんなに大きくな
って(笑)。ちまちましたところにずっといないのが渡辺さんらしい。連作で大小交
互にきているみたいだ。(鈴木)
★月の形だからけっして汚くなくって。月という漢字が読み手に浮かぶように選ばれて
いると思う。(高村)
★三万歳って思いついても、普通の人は読み手に受け入れられないだろうと思って使え
ないですよね。(鈴木)
★こういう言葉を矯めて詩にできる力業が渡辺さん、すごいですよね。(鹿取)
★しかも実感がこもっている。作り物って感じがまったくしない。(鈴木)
(追記)
Wikipediaによると「ネクロポリスとは、巨大な墓地または埋葬場所である。語源は、ギリシャ語の「nekropolis(死者の都)」。大都市近郊の現代の共同墓地の他に、古代文明の中心地の近くにあった墓所、しばしば人の住まなくなった都市や町を指す。」(一部省略)
もしかしたら、今、〈われ〉が三万歳なのではなく、人類滅亡後の世界を透視しているのかもしれない。三万歳になった〈われ〉がいるのは、死者の都=ネクロポリス。累々と人類の墓碑が広がっているのだ。しかしこの歌に身震ふほどの怖さを感じないのは、月の形の石で、ロマンがあるからか。月によって死が清浄に感じられるからか。月の形の石に満ちた景にこそ作者の独特の思いがあるのだろう。(鹿取)
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