かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 4

2022-02-01 12:44:22 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の1(2017年6月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【無限振動体】P9~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放


4  概念を重たく被り耐えているコンイロイッポンシメジがんばれ

        (レポート)
 コンイロイッポンシメジの傘はどのようなものか。私達は言葉、知識を得て概念をかたちづくるのだが、結局それにとらわれ概念から抜けられない。そのようなとらわれをまるで「耐えている」と作者はみて、コンイロイッポンシメジに重ねているのだろう。下の句「がんばれ」とは当然ながら「コンイロイッポンシメジ」にのみ掛かっているのではない。 (慧子)


      (当日意見)
★すると「コンイロイッポンシメジ」の他には何に掛かっているのですか?(鹿取)
★私達にです。(慧子)
★これ、作者のことではないですか。「概念を重たく被り耐えている」のは作者。(真帆)
★作者も入っていると思う。(慧子)
★人類よ、ということですか?(真帆)
★でしょう。単純に自分のことを詠っているようにも読めます。「コンイロイッポンシメジ」は自
 分だよと。(A・Y)
★私は「概念を重たく被り耐えている」のは「コンイロイッポンシメジ」だけと思います。画像を
 見ると紺色で小さい茸です。千本茸のように群れていないんですね。それで人間に勝手に「コン
 イロイッポンシメジ」などという名前を付けられ、そういう概念を被せられている。そんな茸に
 向かって頑張れと声援している。コンイロイッポンシメジを〈われ〉や人類だと解釈するとつま
 らないなあと思います。(鹿取)


      (後日意見)
 1番歌(森のかぜ茶いろのながれ光るなか無限振動体なるきのこ)のところでも書いたように「地に立てる吹き出物なりにんげんはヒメベニテングタケのむくむく」について、渡辺松男は「人間のたとえに使ってしまい、ヒメベニテングタケには申しわけないことをしたと思っています」と発言しているくらいだから、人間は自然界の他のものに対して、むしろ加害者だという意識が強いのでしょう。これから出てくる次の歌なども同じ感受の仕方だと思う。(鹿取)
 ごうまんなにんげんどもは小さくなれ谷川岳をゆくごはんつぶ『泡宇宙の蛙』

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