かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 153

2022-10-28 10:55:22 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の20・21(2019年3月実施)
     Ⅲ〈薬罐〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P99~
     参加者:泉真帆、岡東和子、T・S、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆   司会と記録:鹿取未放


153 牛の子の死にて生まれて湯気あぐるをトラクター来て運びてゆけり

     (レポート)
 トラクターがまだ普及していない頃の田畑は牛が耕していたが、トラクターが普及すると牛もだんだん不要になってくる。一首では「湯気あぐる」に死んで生まれた牛の赤ちゃんの体温まで感じられ、家族の一員である親牛の生んだ子が哀れにも運ばれてゆくのを見送る作者の寂しさがつたわる。(真帆)


 農家にとって牛は家族同様で、牛のお産をおそらく家族で見守っていたのだろうが、牛の子は死産だった。死んだ牛の子が湯気を上げている描写に、家族の悲しみ、悔しさがにじむ。母牛へのいたわりの思いもあるだろう。とはいえ、牛の子は財産、それがむなしく消え去っていく下の句には複雑な落胆の気分があるのだろう。牛の子しか描写されていないが、取り囲む家族が見え、その様々な思いも見える。           

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