かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 29

2022-03-22 12:21:11 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放

     
29 やすらぎのなきことを地に庇いあい鳥はひろげる大雨覆(おおあまおおい)

     (レポート)
 *雨覆い…鳥の風切羽(かざきりばね)の根元をおおう短い羽毛。
 渡り鳥、例えば白鳥ならシベリアやオホーツクから休むことなく飛来してくる。ようやく日本の地に着き、いたわり合うように羽をかさね会っているのだろう。(真帆)


     (当日意見) 
★前方からの気流の流れをスムースにする働きが大雨覆にはあるそうです。飛んでいく方は風切羽
 ですね。(A・Y)
★大雨覆は雨をはじくような大きな羽だと思っていたので。殺戮の多い地上で羽を広げてかばい
  合っているのかと思っていました。(慧子)
★なぜ、安らぎがないのですか?(鹿取)
★ちょっとでも留まると落ちてしまうのでずっと跳び続けていないといけないからではないです
  か。(真帆)
★地に庇いあいだから空から降りてきてのことだと思うのですが。(鹿取)
★ヒマラヤとか飛んでいるときは遅れた鳥があっても切り捨てていくといいますよね。だから大変
 だったねって地に着いた時には庇いあう。(真帆)


(後日意見)(2022年3月)
 雨覆の役割がよく分からない。また、飛ぶときではなく、どうして地上にかばい合うのかもよく理解出来ないので、ネットからいくつか拾ってみた。会員の意見と重複するところもあるが、あげてみる。

○雨覆(あまおおい)は、翼の前方、風切羽の上の方に生えている短い羽です。飛翔の推進力とな る風切羽を守る役割があると考えられています。
○「雨覆」は翼の表面を流れる空気を乱さぬための羽根である。低速になったときには乱れた空気 に絡みついて体を浮かす大切な羽根なのである。
○雨覆は,気流の流れをスムーズにする働きをします。初列雨覆は初列風切を覆い,大雨覆は次列 風切を,中雨覆は初列雨覆と大雨覆を覆い,小雨覆は,中雨覆を覆っています。
○「初列風切羽」前に進む力を生み出します(推進力) 
 「次列風切羽」上昇する力を生み出します(揚力)

 上記の他に風切り羽を雨から守るという記述もあった。様々な意見を簡単にまとめると「大雨覆は揚力を生み出す次列風切を守る役割をしている」ということだろうか。地上に降りて、その大雨覆を広げているのは濡れた羽を乾かすため?とても魅力的な歌なのに、全然核心に近づけていないという気がする。(鹿取)


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