かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 32

2022-03-25 13:31:29 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


32 このところ白根葵(しらねあおい)がわれである きみをおもえばそよぐそよかぜ

    (レポート)
 ある時見かけた花にいたく惹かれる。それは白根葵で、作者はその花になる。「このところ」という時間のゆるい捉え方、「白根葵がわれである」という自意識をひそめた物言いとともに上句の味わいがいい。白根葵はやわらかそうなはなびらで、いかにも風をよく感じるであろうと思われる。そのようだから下句は、
 ①「きみをおもえば」わたしは「そよぐそよかぜ」になるとまず思う。だが
 ②「きみをおもえば」きみは「そよぐそよかぜ」とも考えられる。あるいは
 ③「きみをおもえば」あたりは「そよぐそよかぜ」になるとの想像もできる。
 このように考えがまとまらない。だがこれ32番歌の味わいではないか。恋心はありながら
「そよぐそよかぜ」のように自分自身へ絞り込まず融通無碍である。(慧子)


       (当日意見)
★松男さんの歌は難しくて。①かなと思います。(曽我)
★①だと、〈われ〉は「白根葵」なのに、きみを思ったら途端に「そよかぜ」に変身してしまうっ
ておかしくない?(鹿取)
★私が白根葵で、相手はそよ風。そこにいるのは白根葵とそよ風だけ。(慧子)
★それだとレポートの②ですよね。②は、「きみをおもえば」という条件付きなのに、その条件の
「きみ」は「そよかぜ」なの?白根葵がそよかぜのことを思うと、そよかぜがそよいでくれた、
と解釈すればつじつまは合うけど。私はこの分類でいえば③だと思いますよ。白根葵の〈われ〉 
がきみを思っていると心地よいそよ風が吹いてきた、ということじゃないですか。白根葵はピン
ク色の可愛らしい花ですね。(鹿取)
★次の歌(夕焼けの谷川岳を押したおし逢いにゆきたきはなのかおばせ)にはリアルなあこがれが
 あるし、一連には(こいびとの林檎学われのゲーデル論 霧晴れて別の尾瀬沼はあり)と、とて
も具体的な恋人が登場しますから、その導入の歌みたいですね。(鹿取)

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