そういえば日本の中ではあまり流行らなかったが、欧米圏では現在のアメリカ体制を Empireと呼びならわすようになっていた。そしてそのEmpireは歴史上のあまたの帝国と同じようにoverstretch、つまり拡張しすぎて滅びに向かっている、と続く。つまり、咲き誇ってEmpireと言っているのではないのね。
で、そうするといきおいパックス・アメリカーナ時代、すなわちここ100年ぐらいを思う人が多いかもしれないけど、アメリカというのは基幹部分はイギリスの延長なので(イギリス語を使い、イギリス法制度の改正版を使ってる etc.)、そこから考えるとこの200年が一区切りかもしれないが、the Wesという意味では、その前にフランスの時代があって、スペイン、ポルトガルの時代があるので、400年か500年が一続きと捉えることができる。
そういえば、基軸通貨の話によくこの図が出回ってる。基軸通貨の地位は永遠には続かない、と。
スペイン、ポルトガルの時代はそこまで強大だったとはいえないんだけど、まぁでも意味するところはわかる。こうやって略奪とマネーの拡張を通じてこの集合的な「帝国」は続いてきた。
だから、アメリカ帝国がしぼんでいくということは、同時に、Westernの帝国の最後の帝国になるだろう、っな含意もあるわけ。
そうすると次に何が来るんだろうと考えたくもなりますが、次は、多分200年ぐらい前ぐらいまで戻るような恰好になると考えるのがいいんじゃなかろうか。
しばしば、人民元が~みたいなことが語られているし、一帯一路は要するにマーシャルプランみたいなものと思えばいいだろうとも思ってるけど、だからといってドルの地位を狙うという恰好では物事は進んでいないと思う。彼らが言っている通り、多極でいいという発想でしょう。
で、このWestern帝国(集合的)の最後尾のアングロ・アメリカンは、マネーの拡張と共に、情報通信の発達の時代を包んでいたことが非常に特徴的だったと思う。これにより多くの地域を短時間のうちにまとまった考えにまとめてしまうというある種の技術が彼らの武器になった。
ロイター通信のポール・ジュリアス・ロイターがその先駆者みたいな存在でしょう。さらに、The Economistが1800年代の中盤の創刊なのも偶然ではない。このへんで、情報、知識を独占するという話に発展し、それがものの見方を制御するようになる。それ以前には、世界の遠い地域の話題は知られるとしても何年も後だったり、そもそも知ったところで大した影響もないのが普通だった。それで足りた。
ここにあるのは、よく言えば知の一元化、標準化かもしれないが、少数集団が一意に意図や意味を独占することが可能になったとも言える。私としてはそこから「宗教的な西側」が本格的に始まったといいたい。
ということなので、マネーの問題のみならず、知の一元化に抵抗する動きも重要ですね。つまり、この200年ぐらいこの「帝国」が作ってきた物語管理に抗する動きが必要。そうでないと、宗教的なふるまいをする西側を本格的に崩すことはできない。
簡単にいえば、思い込みを払拭して、虚心坦懐考える人が多くなれば、西側帝国が振りまいている官製の物語にはヒビが入る。イラク人100万人をぶっ殺しておきながら人道的だの自由だのというこの糞いまいましい時代に従う言われはねーよ、と多くの人が思えれば、そうでない時代がやってくるだろうというお話ですね。
■ ロシア版Wikipediaを出すらしい
そんなことを考えているのかどうか知りませんが、ロシアは2022年夏を目途にWikipediaの代替物を立ち上げるそうだ。
Russian alternative to Wikipedia to be fully launched by summer of 2022, says publisher
https://tass.com/society/1091455
底本になるのは、ロシア大百科事典あたりらしい。これは既に存在している。その前に、ソビエト大百科事典というのがあるので、この人たちはず~っとこれをやっているとも言えますね。
で、これをネットに入れるにあたっては当然翻訳も必要だと考えているらしい。
どうしてかというと、ロシアの当局者が言うには、
「私たちの仲間であるBRICS諸国が百科事典を強く求めている。どうしてかというと彼らはブリタニカを使いたくないから」
"Our colleagues in BRICS countries have a great need for an encyclopedia, because they are unwilling to use Britannica.
だそうです。
そりゃそうでしょう。思わず大笑いですね。前にも書いたけどBRICS、すなわち、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカというのは、考えてみれば西側、あるいはもっと具体的には東インド会社に遺恨のあるところばっかり。そこが、アングロ視線のブリタニカを使わないとならない理由はないわけだ。わははは、って感じですね。
で、総合的な百科事典というのはそんなにあるわけではなくて、評判の高いものは現在3つしかない。ブリタニカとドイツのBrockhaus Enzyklopadie、そして我々のものです、とロシアの百科事典プロジェクトの担当者は言っている。
個人的には、私は論争のありそうなものはWikipediaロシア語版の記事をしばしば機械翻訳を通してみている。ロシア語版Wikiは結構スカスカなものもあるんだが、場合によっては、なるほどこんな事情だったのかとわかったり、西側諸国語版で飛ばされている、無視されている人や団体が見えたりする。
それぞれを情報として受け取っていろいろ考えて自分なりの筋道を立てる、みたいなことをするには、やっぱりある種の「野党」がいないと話は見えないから、ロシアが別の視点を提供してくれるのは大変歓迎。
■ イギリスが狂う理由はある
考えてみると、イギリスが国内の言論環境を無茶苦茶にして、知識のある人たちを呆れさせてまで反ロシアになる意味は実際あるんだな、って感じ。
そして、2018年4月に、シリア問題で西側がホワイトヘルメットをしかけアホな毒ガス騒ぎを作った頃、ロシア外務省のザハロワ報道官がブッチギリの率直さでブリーフィングをしたことは、上の流れからみると突発的事象ではないと言えるでしょう。
その中で、4月19日にザハロワ報道官が行ったブリーフィングは、驚くべき率直さでUKの過去を断罪していた。
前にもちょっと書いたことがあったけど、「UKが犯した政治的犯罪」という趣旨で、クリミア戦争もあれば、インド統治の惨さ、中国への阿片戦争と過去150年ぐらいイギリスが世界各国で行った蛮行を、主に西側の研究者の言を引いて手短に紹介した。そして、そこら中で勝手に人殺ししてるのがイギリスの諜報機関だという点も力説(ジェームズ・ボンドのlicense to killは要するに本当だ、と)。
Political crimes committed by the UK
http://www.mid.ru/en/posledniye_dobavlnenniye/-/asset_publisher/MCZ7HQuMdqBY/content/id/3178301
しかも、ザハロワは、最後に、自分のブリーフィングをイギリスの外交グループの人たちも聞いていると思うが、あなたたちは自分の歴史を誇れるんですか? とまで言った。
圧力に屈してたOPCW & シリア空爆から1年
■ オマケ 1
そこから考えると、あの手この手で日本を西側内にとどめようとする動きがあるのも、まぁわかりますね。だって極東の橋頭保ですから。
ローマ法王来日&完全西側化を狙ってるらしいけど私は知らない
■ オマケ 2
ロシアのやろうとしていることはシリア危機より大きかった