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バルバロッサ作戦 v2: 東欧諸国のNATO加盟は最初から熱心ではなかった

2014-11-05 10:00:39 | 欧州情勢複雑怪奇

バルバロッサ作戦ファンの皆様(いないって)お久しぶりです。

現在ウクライナあたりで起っていることは、またまた西側の主にドイツ世界のスラブ世界の侵入のようじゃないかというわけでこのタイトルをつけているんだけど、この侵攻作戦は1941年にはあんなに熱心だったドイツが2014年版では、ドイツ国民の支持が全然得られず、結局どうも、

バルバロッサ作戦 v2.: 正念場-アメリカうざがられ、ドイツ逃げ延びる

って感じになってるなというのが10月初旬までの話。

1か月たって、ハンガリーに注目が集まっている。



(サウスストリーム計画図)

■ ハンガリーがロシアに近づいているとワシントンが懸念

Washington tries to check Hungary's drift into Kremlin orbit
(ハンガリーがクレムリンの影響圏に落ちそうなんでアメリカ政府がチェックしてる)
http://uk.reuters.com/article/2014/11/01/uk-hungary-russia-energy-idUKKBN0IL2OE20141101

起っていることはこんな感じ。

  • ハンガリーのエネルギー会社MOLは、クロアチアのエネルギー会社INAの株式を49%保有している
  • MOLはハンガリー政府が1/4ぐらいを出資している会社
  • このMOLが同保有株式を、ロシア企業(確定ではないがおそらくガスプロム)に売却しようとしている

というわけで、これが成立するとこのロシア企業はクロアチアのエネルギー企業に大きな影響力を持ちます、ってことなので、クロアチアに注目してもよさそうなものだけど、米政府はそこよりなによりハンガリーがこれを仲介していることを危険視している。

なぜかというと、ハンガリーのViktor Orban ヴィクトル・オルバーン首相が予てからプーチンのモデルは尊敬すべきという調子だから。といっても、私が見てる限り、別に政策がなくてロシアに寄っちゃうとかいう話じゃなくて、要するに経済政策的に新自由主義に懐疑的な人なのだと思う。ハンガリーあたりは考える人が出る国なので、現行の経済システムやってたらハンガリーに将来ないやん、と判断してEU/米の路線から多少離れてるってことじゃないんですかね。で、そのある種の担保としてロシアと接近してるんじゃないかな、など思う。しかし、それが米には我慢ならない。

そういうわけで、今回も本体のクロアチアとハンガリー、じゃなくてハンガリー問題として騒ぎになっている。

似たようなことは春先ブルガリアでもあって、マケイン他がブルガリアを脅しつけてサウスストリームというパイプライン着工を中止させている。サウスストリームは現在のところ、先の見通しが立っていない。

サウスストリームとクロアチアは上の図でわかる通り直接関係ないはずなんだけど、支線を作るという話があっても不思議はない位置ではある。

そういうわけで、このクロアチアの取引がどうなるかは今後のお楽しみ。

 

■ 東欧諸国のNATO加盟時の状況

そうこうしているうちに結構不穏なタイトルの記事が出て来た。

NATO: Rebellion In The Ranks? – Analysis
http://www.eurasiareview.com/02112014-nato-rebellion-ranks-analysis/

加盟諸国内で反乱が起きてるんじゃないの?という分析記事。

NATOとロシアおよび旧ソ連の衛星国だった東欧諸国との関係がどんな成り行きで現在に至っているのかが網羅的ではないが述べられている。1999年から3回に分けて加盟していく際、90年代から熱心だった国は実は少ないという点が述べられているが、中でも、ハンガリー、チェコあたりのある種の不承不承な感じは最初からずっとそうだったことがわかる。

3回の加盟国は次の通り。

  • 1999年加盟組(3か国:ポーランド、ハンガリー、チェコ)
  • 2004年加盟組(7か国:エストニア、スロバキア、スロベニア、

            ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア)

  • 2009年加盟組(2か国:アルバニア、クロアチア)

    
1997年の調査で、NATO加盟の支持はハンガリー32%、チェコ28%

ブルガリアは世論が真っ二つで、2002年反対派がわずか1%の差で負けて加盟に進む。

ルーマニアは、東欧全体で見て異常値と言えるほど支持率は高くコンスタントに70%台。

スロベニアは、1990年代には世論はEUにもNATOにも懐疑的だったが、2003年の住民投票でEU/NATOの加盟が決定。それでもEUについて89%、NATOについて66%と差があった。

加盟後も、この曖昧な感じは尾を引く。根本的にこの同盟がどういうものなのかを各国はあまり理解しておらず、NATOというのは単なる安全保障が与えられるもの、みたいな思っていたのが、各種義務があることがわかり、その上定期的に軍隊を近代化したり演習に参加しないとならない。さらに、外征まであった(コソボ、アフガニスタン)。

ということで、1999年にNATOによるコソボ空爆の際には、直前に加盟を決めたハンガリーは承認を求められ動揺する。ハンガリーにしてみれば、セルビアと自分の間に何か不和があるわけではないし、両民族の付き合いは非常に長いから、出来る限り小さな協力にしようと緊急に話し合いがもたれ、結果的に空域の通過は認めるが、自軍兵士を軍事作戦に参加させないという限定をし、NATO側から不信感をもたれる。

アフガニスタンでの戦争では、こういう場合に勇んで名乗りを上げる役割を担っているポーランドは兵士を出したが、ポーランド軍兵士の死亡が相次ぎ、2009年までにはポーランド世論の77%が撤兵しろと言いだす。

2008年、グルジアとロシアが戦争になった時には、グルジアはNATO加盟国ではないにせよ、東方パートナーだのといって一体化しようとしていたのに、NATOは動けなかった。そこで、奇妙な結論が表面化する。それは、自分たちは遠い戦争に参加するが、自分のところに危機が訪れてもNATOは何もしない。これは何だ、と。

 

■ スラブなんだもの+ハンガリーの理知的反応

現状は、先月「東欧地区がプーチンになびいていると米が怒ってる」で書いた時から特に大きな変化はないと思う・・・。ただ、冒頭で書いたようにハンガリーの一貫性が際立ってきたという点が重要か。

あ、クロアチアまで動いているわけだから、プーチン側への宥和の動きというか、積極的接近というか、理由も程度もまちまちだけど、いずれにしてもなんか全体にバルカンがモスクワを見上げているという感じはある。

ハンガリーの動きが重要なのは、他の東欧諸国は全体としてみれば基本的にスラブ系優位の国が多く、そこは最初から英米・ドイツの手先になってロシアに攻め込むなんていうビジョンを承認しにくい感情的な基盤がまず全体にある(ルーマニアは半分ドイツなので例外)のに対し、ハンガリーはそういう問題でロシアに接近しているわけではない点だろう。

なんせ、オルバーン首相はEUにも噛みついている。EUの政策がハンガリーの主権を侵害していると認識しているようで、その旨をかなりあからさまに示唆したことさえある。またものの考え方として、illiberal democracy(リベラリズムなき民主主義)を選好したいと考えている模様。そういういわけで、全体としてプーチンっぽいと西側メディアは括っているけど、私はもう一歩シンガポールのリー・クアンユーみたいな感じがしないでもない。

これが中・東欧全域に広がるかといえばそうとも言えないわけだど、全体にあるムード、すなわちEU/NATOはかつてのソビエトがうざかったようにうるさい、俺らはただ主人を変えただけじゃないか、という感情に理性的な言辞を与えることになると・・・。どうなるんだろう? 

考えてみるに、それらの大なり小なり、異なる理由によって不満と不安を抱く国々が、小国故に思い切ったこともせず、従ってEU/NATOに入ったままに存在し、結果的に内部から抵抗して組織は行き詰まるってな方向に行く可能性が見えて来たという感じだろうか・・・。

これをバルバロッサ作戦と捉えれば、前回との比較で要するにドイツのルーマニア、ブルガリアあたりへのコミットメントが足らないんだよね。これがあれば、全体にEU/NATOとして成り立つ感じになるんだけど・・・。

そういうわけで、今後の注目点は、遠くから出張って来るアメリカの上院議員とかいうのじゃなくて、これら中・東欧諸国のぐずぐず感に対してドイツがどう出るかだろう。(出ない、ってのを含めて)

 


 

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