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中露のSCOからユーラシアのSCOへ

2019-06-15 18:36:54 | アジア情勢複雑怪奇

ホルムズ海峡の立ち回りの意味は何なんだろうか。

多分、先に行ってみないと本当の意味は出てこないんだろうけど、 雰囲気として、アメリカ+日本のメディアが、火のついたタンカーを見てわいわい騒ぐほどには騒々しくなっているわけではない。

その騒々しいメディア上の騒ぎが起こっている中、イランの大統領はキルギスタンに行って上海協力機構(SCO)の首脳会議に出ていた。

 

NHKが、習さんがロウハニに会ったことだけ切り取って記事にしていたけど、

中国 習主席 イラン ロウハニ大統領会談 連携強化で一致/nhk
2019年6月14日 20時23分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190614/k10011953031000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_010

加盟国首脳は全員会ってるでしょう。

ロシアも当然会ってる。

http://en.kremlin.ru/events/president/news/60754

 

この挨拶の中でプーチンは、イランとロシアはほんとにいろんな分野で協力関係を作ってきましたとこれまでの進捗を喜びつつ、就中、シリアに関して、イラン・トルコ・ロシアのフォーマットを作って話し合いの場としたことを成果として言及してる。実際それはそう。私の言い方ではこの地域の「国持大名」が地域の危機を前に、しっかり出てきたみたいな恰好。

ロシア・トルコ・イランの迫力

イラン関連はまだまだ揉めるから大変だとは思うが、私が前から言っている通り、最近最も目覚ましい地政学的示唆のある出来事は、カスピ海宣言だと思う。これは西側にとって重要すぎるからこそ無視されてるというのが私の考え。

グレートゲーム v.2.2: カスピ海は沿岸5カ国の戦略的財産である

ロシア、イランにコーラン最古の手書き文書を贈る

このへんはまた問題になることもあるだろうからその時ゆっくり考える。

 

■ パキスタン、インド

今回のSCOサミットについて、全体としてまとまった何かが出てきたというほどのディールはないんじゃないかと思うけど(まだよくわからない)、しかし、むしろ、当然のようにユーラシアの首脳たちが会合して、協力関係を申し合わせてるという事実そのものが、実のところ、多極化してるわな、という状態を示しているとも言える。

その中で、これまでと違う感じも出てきて、この組織が広がって来たことが示されているという感じもある。その違った感じというのは、インドとパキスタンが入ると、オーディエンスが増えるわけだわな、といったところ。

つまり、これまでは上海協力機構というのは中国とロシアが中心になって、互いの国境線問題を解決して、平和的で友好的な環境を拵えますというのが眼目だったわけでしょ。そして、その2国の間にある旧ソ連だったいわゆるstans、なんとかスタンとつく国々がそこに入って、中央アジアの安定を図るというのが当初の目的みたいなもの。

そこから、今度はインドとパキスタンが正式加盟した。

上の写真は、真ん中が開催国キルギスタンのジェーンベコフ大統領で、彼の右手に中国の習さん、左手にロシアのプーチンが配置されてる。

で、そのプーチンの左隣にいるのがパキスタンのイムラン・カーン首相。

これを、プーチンがカーンと仲良くしてる、インドのモディは端っこだ~とか、パキスタンの人たちがわーわー言ったりしちゃってたりする。

インドが巨大な人口を抱えていることは知られてるけど、パキスタンも2億人以上いるわけで、そりゃもう騒ぐ人には不自由しない。ネットにもパキスタン系のものがいっぱいあがってる。

PM Imran Khan Complete speech at SCO Summit 2019 | 14 June 2019

https://www.youtube.com/watch?v=OcBM_6_4Fm8

 

もちろん、去年あたりはインドのモディがプーチンと再々会って話しているわけで、その時には、インド側がパキスタンを子馬鹿にする、みたいなことになる。

 

パキスタンとインドの不仲ぶりはしばしば危険な水準なのでわからないでもないけど、この2国がSCOに同時加盟した意味は、要するにこの不仲を調整するためだと思う。

冷戦時代中を通して、インドがソ連に、パキスタンがアメリカ(&中国)の側だったこともあり、インドとしては、ロシアの関心がパキスタンに向くのはゆゆしき事態といった趣はかなりある。

とはいえ、インドは、S-400を導入することになっているのみならず(これもまたアメリカはなんとかして崩そうとしているわけだが)、その他兵器類も結果的には、まだまだロシアの上顧客であることは変わってない。

 

他方の、パキスタンのカーン首相は、もう冷戦じゃないんだから、インドがソ連製、パキスタンがアメリカ製の武器を買うという形は終わり、パキスタンもロシアから買うこと考えてる、とか言い出してもいる。

 

‘The Cold War is over': Pakistan PM mulling arms deals with Moscow ahead of SCO summit

https://www.rt.com/news/461781-imran-khan-pakistan-sco/

 

しかしこの人は、モディなんかと系統というか毛色が違ってて、民族主義をあおってわーわー言うというより、人に投資をしましょう、みたいな方向に引っ張っていこうという発言が目立つ。むしろプーチンとかと反りがあいそうなところがある。

そしてこの人もかなりはっきりといろんなことを言う。経済プロジェクトの構想を作ってもアメリカの制裁で進んでません、みたいなことを言ってる。

また、つい先ごろはイランとの間で、国境のパトロールに関して協働することを宣言したりしてる。

Iranian President Rouhani declares joint border ‘reaction force’ with Pakistan 

https://www.rt.com/news/457203-irans-president-rouhani-announces-joint/

 

ぶっちゃけ、パキスタンが、テロ支援国家群であるNATOの言うことを聞く気は金輪際ねー、とか言い出したら、アメリカはアフガニスタン撤退に悩む必要はない。封鎖されるだけだから(笑)。

 

ということで、焦点はイラン、パキスタンの並びであり、ここをアラビア海からの入り口としたアフガニスタンを含む中央アジアでもあるな、といった感じ。

その意味で、SCOは中露を中心とした内陸部に焦点をあてたSCOから、黒海、カスピ海、アラビア海に降りてくるユーラシアの地勢に沿ったSCOに拡大しつつあるなといった趣。

 

■ パキスタンから見た冷戦構造になった原因

最近発見した、パキスタンの人によるこの地での冷戦のとっぱじめ、といった感じの記事が興味深い。

Russia, a fast- emerging friend of Pakistan

https://nation.com.pk/22-Apr-2019/russia-a-fast-emerging-friend-of-pakistan

それによれば、

1959年に、当時のパキスタンの大統領だったアユーブ・ハーンが、ペシャワールの空軍基地を米国に使わせる許可を出した。

そこから、米はソ連領内へのスパイ偵察を行うつもりでこうなった。スパイ機はソ連に撃墜される。

ソ連はパキスタンを責め、ここから、ソ連ははっきりと反パキスタンとなり、ソ連はインド側になる。1971年のインド・パキスタン戦争でさらにこの構図ははっきりする。

ソ連は国連でもインド側の主張を飲み、パキスタンの側には絶対立たなくなる。

1979年のソ連のアフガン侵攻問題でもパキスタンはアメリカに付いた、これは間違っていた、みたいなことが書いてある。

総じていえば、ロシアを友だちにした方が絶対いいから、といったところで、こんなに書いちゃうのぉ?みたいな感じがする。コメント欄では、ロシアはフレンドじゃない、とかいってくってかかってくる人がいてそれも興味深い。

そして、やっぱ英米は、パキスタン、アフガニスタンから中央アジア諸国を取って、ソ連のどてっぱらに風穴を開ける作戦を最初っから持ってたんだなと感慨深い。結局これって、イギリスがやってたグレートゲームそのもものでもある。

 

■ いろいろあったけどさ

パキスタンもイランも、対ソ連で使われたという点で似てる。そして中国も対ソ連の大きなファクター。

にもかかかわらず、現在、ロシアと友だちになりましょうキャンペーンが各地で起こってると言ってもいい状態が実際ある。アメリカでさえ、保守派を中心にロシアは敵ではない、ロシアとは友達となるべきだといった根強い主張がある。

結局これは何かというと、ロシアがどうというより、ソ連がどうというより、西側と友だちになるとお金もちになって、文明的になって、みたいな話を聞かされていたわけだが、開けてびっくり玉手箱、西側ときたらアルカイダ作ってソ連を嵌めて、以降懲りずに「テロとの戦い」とかいう壮大な自作自演作戦をしていたことに、いい加減、みんな気づいちゃって、腹たてて、悔いちゃったということじゃなかろうか。

この件でパキスタンとアフガニスタンは一手に不利益を被ったとも言えるから、パキスタンからぶっちゃけた人が出てくるのもまぁ無理はない。

そして、西側というのが豊かなのかと思えば、結局、札刷って「カレンシー」を増やして(富を増やすのではない)他人の実物資産を買いまくって収奪するという、実にまったく生産性のない作業を根幹にしてんだもんなー、という、仕組みの暴露も結構大きい。

 

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