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1814年と1914年から見る神聖同盟の有用性

2014-06-01 22:43:51 | 欧州情勢複雑怪奇

現在のロシアと欧州の間の関係は、つまるところ神聖同盟状態なんじゃないかと、単なる思い付きで書いたのが2か月前。

ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題(2)

神聖同盟とパイプライン

神聖同盟の前に1812年ロシア遠征

私の頭の中にあったのは、現在のアメリカ+EUの勢力と1800年前後のフランス革命以降の欧州が似てやしないか、というところ。彼らはやかましく民主化だのなんだのといいながら、その実クーデーターを厭わず他国の政治を変えようとする永久革命論者のような行動を取り続けている。この動乱を、保守の壁としてのロシアが受け止めている。で、ふと見るとドイツはアメリカ+EUに入っているようでいて入ってない。おお、これはフランス革命以降に自由だの平等だの博愛だの民族がどうした国民国家がどうしたという騒動が持ち上がった時期に、ロシア、プロシア、オーストリアが団結した神聖同盟状態のようじゃないのか、というもの。

と、今週、The American Concervativeというアメリカの共和党孤立派系の牙城みたいなウェブに神聖同盟に言及した記事が掲載されていた。思わず、おおお、とうなったのは言うまでもない。著者はWilliam S. Lindさんという方。寡聞にして存じ上げなかったのでwikiを調べたら、軍事の専門家、保守文化関係の評論家の方らしい。

The Lessons of 1814
http://www.theamericanconservative.com/articles/the-lessons-of-1814/

(1814年、パリに入るロシア軍)

内容はこんな感じ。

  • 1914年から100年だということで今年は年初から何かそんな話をする人が多かった。といっても現状と1914年とでは状況に大きな違いがある。1914年には、英仏露の協商側と独墺伊の中央同盟という明確な組み合わせがあったが、今はない。
  • でも、主要国で鍵になるプレーヤーたちが現実的でない、傲慢なことをやっていて、そういう状況の中で火種がくすぶるという状況は似ている。1914年のバルカン半島みたいなところが現在にもあり得るのかもしれない。例えば尖閣であり、もし米国とEUが完全にアホだった場合にはロシアがウクライナ東部を取った場合、など。
  • さらに、主要国の鍵になるプレーヤーたちが古いパラダイムに固執しているところも似ている(この組み合わせを追及したらどうなるのか、に考えが及んでいないということだろうと思う)、云々。
  • 1914年前も重要だけどそれより100年遡った1814年というのも比較価値があるかもしれない。
  • この時は、フランス革命以来不安定化した体制を保守派が守りきってその後百年間、いろいろあったけどとりあえず続いた。これは、保守派にとっては希望じゃないのか。

そこで、アレクサンドル1世が主導したといわれる「神聖同盟」の話が登場。

 (そうです、あなたです。ロシア皇帝アレクサンドル1世)

  • 神聖同盟はその当時も現在も、なんてことのないナンセンス扱いされがちだが、それは違うだろうという意見もある。
  • ロシア、プロシア、オーストリアの3つの帝国は、フランス革命が持つ脅威というのを、民主主義とジャコバン主義と見定め、保守的なキリスト教徒の君主が生き延びるためには、3帝国が団結する必要があると理解した。
  • そしてその通りにしたからその後大きく混乱しなかった。それに対して1914年にはこの3つが団結できず、最終的に大混乱になった(第一次世界大戦となり、最終的に3つとも破壊された)。
  • 1814年の例が示すのは、保守派が新しいパラダイムのために時間をかけて調整できれば、私たちは失敗しないとうことだろう。

ということらしいのですよ。

■ 過去200年来か300年来か350年来か

面白く思ったのは、現在を大きなパラダイムチェンジの時期だと考えていることまでは多くの人に共有されていると思うけおど、著者は、その大きさを1648年をウェストファリア体制以来最大だと考えているらしいこと。
 Today’s expanding crisis of the state system faces us with another paradigm shift, the greatest since the Peace of Westphalia in 1648. Will we respond as we did in 1814, or in 1914?

私は、民主主義+クーデータを、この著者がいみじくも語っているように民主主義+ジャコバンと想定して、つまるところフランス革命からのだいたい200年の時代が終わろうとしているのか、などと考えているんだけど、ウェストファリアまで遡るというのもわからなくはない。そういえば、アメリカにおけるロシア研究の第一人者であるスティーブ・コーエン氏も、今回のウクライナ問題を語る際に、歴史家としてこれを話し始めるなら300年前からと言いたいけど、それじゃ時間がないので、みたいなことを言っていた。でもウェストファリアからだと350年・・・。名誉革命から、だろうか?

そういうわけで、神聖同盟説はまんざら捨てたものではないらしく、私としては大変にうれしい。

ただ、私自身は結局これは失敗するシナリオ、つまり激動に向かう可能性も捨てきれないとも思ってる。

■ もっと大きいのかもしれない

ふと思えば、この間中山恭子先生がしみじみ非常に意味深なことをおっしゃっていたのも、このパラダイム・シフト説をおとりになっていらっしゃるからだろうと思える。

前世紀までは西欧の文化を世界に普遍的なものとして広げるのが良しとされていた。でも今世紀は、アメリカの文化的な流れ、ヨーロッパの流れだけでなく、アジアの文化、暮らし方みたいなものも認められつつあるんじゃないか、ただそのあたりは整理されず混沌としている、といったことを穏やかに穏やかにおっしゃっていた。

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