どうしてそんなに観光客に拘るのかまったく謎なのだが、日本政府はひたすら観光客の誘致に余念がない。私はあんまり好ましい傾向だと思ってないですけどね。
で、外枠では3000万人近い観光客が来日し、これは過去最高だとか言っているが、その中で中国、韓国、ベトナム等々の近隣諸国以外の欧米を含むその他エリアからの観光客は300万程度なんだそうだ。
「日本は退屈な国」欧米人アンケートの衝撃結果に挑む観光庁の勝算
http://diamond.jp/articles/-/159825
たしかに、2017年の訪日外国人観光客は過去最高の2869万人と華々しく報じられているが、実はこの「日本人気」はベトナム、中国、台湾、韓国というアジア限定。欧米などのその他のエリアからの訪日外国人観光客となると300万人程度で、これは「中国やタイにも負けている」(田村明比古・観光庁長官)というのが現実なのだ。
<略>
観光庁が、ドイツ、英国、フランス、米国、カナダ、オーストラリアの6ヵ国を対象に、海外旅行に関するアンケート調査を実施したところ、「日本には『富士山』『桜』『寺』があるくらいで、長期間滞在する旅行先としては退屈だと思われていること」(田村長官)が判明したというのだ。
なんとなく、わかる気がすると言ったら叱られそうだが、いやでもわかる気がする。
旅行は
- 探索型
- レジャー・バカンス型
- 団体/ショッピング型
に分けられるんじゃないかと思う。で、近隣アジアからの人に多いのは3だと思う。とりあえず行ってみよう、なんかみんな行ったし、買い物できるし、珍しいものあるし、みたいな。こういう旅は長くはない。
2は、適当に気持ちのいい場所で気持ちのいいホテルだったらたいていどこでもいい。アメリカのツーリストってこんな感じだと思う。寒いから南部とかカリブ海にいって、ワンダフルなホテルでごはん食べ放題、ビーチも素敵よ、みたいな。
あと、欧州の一部+ソ連圏には、労働者のお休みが長くて休暇というか保養みたいな感覚で長逗留させるという時代もありましたね。今もその名残の感覚は結構あるのでは? ロシア人がトルコやギリシャに行くというのはその名残じゃなかろうか?(避寒って結構重要な要素だし)
で、私が思うに、旅が長くなるか否か、あるいは興味を引かれてわざわざ来ようとするの人にとって重要なのは1の要素なんじゃないかと思うんですよね。たとえパッケージは2、3であっても、この街を探索したい、この話が起こった場所を追っかけたい等々という旅行者なりのテーマがあると、不便だろうがなんだろうが出かけていくし、それを達成するための日程を作る。
欧州各国の街々には街の歴史があって、その物語が結構有名だったりする。イタリアはルネサンスがらみでうんちくのある人は世界中に多数いるわけだし、ドイツ圏(オーストリアを含む)、ハンガリー等々にも歴史的に争ったり、取り合ったり、あるいは拠点だったりという街がある。さらに、欧州の東のロシアだって、レニングラード(ペテルブルグ)、モスクワ、スターリングラード(ヴォルゴグラード)に行ってみたいという人は、頭の中に歴史上の物語を抱えているでしょう。だったらもう一歩、クリミアにも行こうかな、みたいな。
さてそこで日本なわけですよ。日本だって街々の歴史があるわけですが、日本の場合そういう語り口で語られることはほぼない。そもそも日本人がそういう風に歴史を語ららないんだから、外国人に語れるわけもない。
そこで結局、ありがちな、京都は昔の都です、奈良も立派です、XXは京都に似てます、XXは有名です、みたいな物語性のない紹介の仕方になっちゃう。これでは、団体観光客向け以上の人を納得させられない。
しかも悪いことに、日本人は明治維新以来、ほとんど神話みたいな「国史」になじみ過ぎているため、足元から歴史を語ることに慣れてない。
例えば、東京に着いた人が、パレスをまず見ようかなと皇居を目指してみることは不思議ではない。が、行ってみればそこにはパレスらしいものはない。でもなんか広大な緑があってお濠もあるから一応納得してみるが、書かれたものによればそれは徳川氏の居城だという。なにこれ?
いやいや、どうやらエンペラーはずっと京都にいたんだってよ。ということで京都はどうなっているのかといえば、確かに御所と名のつくものはあるんだが、あれってそんなに豪華なものでもない。あれ、エンペラーってどういう感じだったわけ?と誰だって不思議になる。
しかし日本人に聞いても、へぇ貧しくとも高貴なお方どしたえ、ぐらいしか答えは帰らないでしょう。
そう、現実にはエンペラーさんは12世紀以降実権はないし、特に政治的に重要視されていない期間も長かったため、それ相当の現実の「場」がない。
逆に場があるのに説明が足らないこともある。日光などはその好例かも。東京から入る外国人観光客にとって行きやすい場なので(外国人向けのJRパスで全部乗っていける)行く人は多いんだが、なぜここなのかを理解してもらうためには、徳川氏という関東以外の人が江戸を取って、ここを拠点にするために北関東の豪族を全部追っ払ったり婚姻関係結んだりして北関東側を平定した、みたいな話があればさらに興味深いでしょう。そして、その最北端にあるのが日光と考えれば宗教的のみならず、軍事的な示唆もここにあることがわかる。マップを見よう、マップを。
とかとか、考えるに、日本人の本当の歴史は地方豪族の争いの歴史みたいなものなわけで、ここをわかりやすく話を整えることがまずもって日本人にとって重要だろうなとか思う。
しかし、そこらへんを丁寧に説明すると、天皇を中心とするという国体神話とぶつかるから説明できないのかもしれない。東国と西国が半分分かれているような恰好になっていた時間がかなり長いとか、天皇といえども北条氏に隠居しろと言われて退位させられたことさえあるんですよ、とか言いたくないんじゃなかろうか?
でもこっちが現実だしね。
日本の政府やら政府機関がからんで日本を紹介しようとするプロモのほとんどすべてが、まずもって自然が素晴らしい、自然が素晴らしい、日本人は自然と共に云々になるのは、歴史から逃げているからではないのか、など疑っている私。
そういうわけで、日本人自身があいまいに思っている「日本」を日本を知らない人に紹介するのは、そりゃ大変ですよ、ということだと思う。
クルマを購入するまで地図というものにあまり関心を持てず、歴史も地理もいつも赤点寸前でした。
普段の生活のなかでは、公共交通機関の何番目の停車駅であるかの方が影響が大きい事も日本人の地図離れの要因ではないかと思います。
電車だけではなく、かつては河川に人が属して、同じ河川の流域は仲間だが、違う川の流域とは接点が無いとかもあると聞いています。
川が流れるということの裏には地形があり、流域が違うという場合、集落間が山で遮られているというのもあるでしょう。
山で遮られた集落を繋ぐ道路は地図で見るとつづら折りになっていて、平面で見たときには何無駄なことしているのだと誤解してました。
現在では地図の等高線情報から立体画像を得るカシミール3Dや航空写真とレイヤーを重ねて標示できるgoogle Earth等がありそういった新しい時代の地図が広く使われるようになれば、地図離れも減ると思います。これからでしょう。
そして、地図を見る癖がついて漸く読めるようになって改めて思うのは、何故に京都に平安京が作られたのか、さっぱり謎です。名阪上に出来るのが当然で何故に線からあんなに外れた場所なのか。