米軍が地中海からシリア軍の基地を攻撃した。トマホーク59発、シリア軍によれば死亡者は6名。
で、この攻撃はあきらかにシリア軍を狙ったもの。そのシリア軍はISと戦っている。
従って、それを攻撃する米軍はISの味方。そうです最初から、という話がより鮮明になったとも言えますね。
いやしかし、それ以外の効果は何もないという、考えようによっては不思議な攻撃。
で、そうは見せたくないので、シリアで化学兵器が使われたと言う話を作った、と。事実関係は、攻撃準備が出来たので化学兵器話をぶち上げた、ってことでしょう。米の国連大使のあのへんな様子は事実を知りたいんじゃなくて、ここで私が怒りのパフォーマンスしなけりゃ攻撃できなくなるんだから! 頑張らなくちゃ!だったんだなと。
さらに、米国務長官ティーラーソン氏は、ロシアは2013年にシリアから化学兵器を取り除いたと言ったがそれは失敗している、と事体をロシアのせいにする意向を示している。
Tillerson claims Russia failed to implement 2013 deal on destroying Syria’s chemical arms
http://tass.com/world/939912
バロンを安全保障委員会から追放して軍主導にしたのもこの戦略転換の故でしょう。
後追いで、ロシア軍が発表したところによれば、59発のうちシリア軍基地にヒットしたのは23発だそうだ。なんなのこの攻撃、という戦略性のない攻撃でした、と。
Top military brass notes only 40% of Tomahawk missiles fired hit targeted Syrian base
http://tass.com/defense/940012
■ ぼろ糞な状態に変化はあるのか@現地
で、この先どうするんでしょうね。
トマホークでシリア軍を叩いたからといって別にシリア軍が壊滅するわけではない。
イランが怖気づくという話でもない。ロシアもダメージがあるようには思えない。
トルコはハーフウェイで見てて、今日は右に、明日は左にと激しく動き回るミッドフィルダーですかみたい感じでしょう。トルコが気にしているのはクルド一択ですから。
米国は正義の味方だ~とかいったって、中東の現地民でそんなことを信じている人は誰もいない状況は不変。
欧州と日本は旗降ったり提灯行列して金出したりはするだろうが、現地兵を出してくれるわけではない。
じゃあ米軍を何十万人も投入するのか? NATOを投入してシリアの本格侵略をするのか?
一応考えられなくはないですね。そしてそこをイラク、コソボのようにNATOの植民地にして、その上で、これが正義だと言い出す、みたいなこともなくはないでしょう。
その場合には、シリアはようするに現在のアフガニスタンみたいになるんでしょう。で、アフガニスタンは西側の好きなような状況になってますか? シリアだって同じじゃないですか? って話が待っている、と。
つーわけで、このトマホークの攻撃なるものが明らかにしたことは、
・中東北部においてアメリカの味方になってくれる現地地上軍は、アルカイダとその変容たるISである
という厳然たる事実のみ、って感じですね。
(クルド勢はひょっとしたら、アメリカ一本に頼ることの危険性を認識してきているのではないかというのが私の考え。事実それは正しいんだが、アメにとっては大ピンチ)
■ ぼろ糞な状態に変化はあるのか@US
では米国内はどうなのか。
一応若干のアメリカ人は喜んでいると思います。アメリカは正義の味方なのだ~といえる芝居にはなってるから。
そうだそうだ、そうなんだ、実はアサドはサリンを使う恐ろしい奴なのだ、みたいな。
が、しかし、トランプを支持した人たちというのは、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナ、シリアと偽旗作戦から侵略を行うこのクソな状態を止めてくれるものとしてトランプに期待した人が多数いるわけです。
ということは、+-で考えれば、トランプにとってはマイナスだと思う。
ではそれは民主党にとって+か? どうなんでしょうね。従来ならこんなあからさまな軍事行動には反対の人が民主党には共和党との比較では多かったわけですが、ここ数年で事情はがらりと変わったので、この手の攻撃をどれぐらいの人が喜んで迎えるのか、かなり不透明。
むしろ、大勢はトランプは引き続き嫌い、のままではなろうか。
結果、トランプは、一般人の支持を失い、ネオコン/トロキスト勢力の傀儡政権になりました、という状況。
しかも、一般人の支持を失うために、傀儡政権から抜け出す手段もなくなった、となる確率が高い。大統領制の場合、一般人の支持があれば、既存勢力に対抗できる可能性は結構大きい。
■ イスラエル+湾岸+アルカイダ
じゃあなんでこんなことをしたのか。焦点はイスラエルなんじゃなかろうかというのが私の現時点での考え。間違ってるかもしれないけど。
つまり、米国はイスラエル、湾岸諸国、アルカイダ+ISを裏切ったりしませんという証を立てるための攻撃って感じではなかろうか。これが確認されれば、米国内でのトランプ政権に反対する派は順次軟化する、とか。逆にいえば、トランプ政権はイスラエル政権になるとも言えるし、アルカイダ政権になるっつー話でもあるわけだけど(笑)。
そういえば、先週あたりには、こんな話もあった。
イスラエル、26年ぶりに入植地承認 米は無制限の建設に懸念
http://www.afpbb.com/articles/-/3123550?cx_part=popin
また、上で引用したティラーソンが、これはロシアのせいだ、との言明は、ロシアと対立するという宣言と同じ。
イスラエルはシリアを通して、ロシア+イランが着実に地面を固めていっていることを放置できない。だから、シリアのダマスカス周辺にミサイル打ち込んでみたり、なんだりかんだりず~っとロシア軍を試すようなことをしている。
大方の推測するところでは、ロシア軍はシリアへの介入時から、イスラエル軍機は撃たないという了解下にあるんだろうと考えられている。だから、イスラエル軍機はわざわざシリアに入っていって、撃たれないのを知っていて、いいか、ロシアの防衛網なんて大したことはないのだという記事をあちこちで書かせて喜んでる。飛行航跡をトラックしているのと撃ち返すのは別の話なわけだが。
イスラエルにとって状況が悪いのはもちろん自ら蒔いた種なのだが、そこで屈するわけもないのがイスラエルってところが問題。
でもってもちろん「イスラエル」というのはイスラエルに住んでいる人々の国じゃなくて、the Westのプロットですから、中東におけるアメリカの力の減退をなんとしても阻止したい人々が過激派としてイスラエルロビーになっている、と考えればいいんじゃなろうか。
いずれにしても、なんというか、アメリカなるところは想像以上に愚かしい団体だなぁと毎月多くの人が思いを固める事態が進行しちょるなぁって感じ。
トランプ政権のすごいところは、アメリカ国民のかなり純粋な支持までも「喰っちゃう」ところ。
それでも盛り返せる何かがあるのかといえばそれもない。あるのは無法者魂と火力のみ。
「最悪でも要衝に米軍基地を建設できればOK」
「最終的に露中を潰せれば元が取れるのでOK」
とか考えていそうで、このままどこまでやるのかと思うと、そら恐ろしいものがあります。
国内が荒れ放題でも、自分の屋敷の周りさえ綺麗なら平気な人たちなんでしょうし。
http://rybachii.blog84.fc2.com/blog-entry-3425.html
N.G.クズネツォフ記念・ロシア海軍情報管理局さん☆
ほんとに、まったくの無法者だぜ俺様は、という態度こそアメリカだと思ってるんでしょうね、アメという集団は。
ある意味、変態の領域に入ってるなというのが私の判断ですね。無意味な殺傷が好きで好きで仕方がない様子もそうだし、自分は強いと言わないと死んじゃう病にかかっている感じ。