昨日(1月28日)、「国歌斉唱義務不存在確認等請求」裁判の控訴審の判決が、東京高等裁判所で行われ、傍聴に行って来ました。この裁判の一審・東京地裁の「難波判決」では、都教委の発令した所謂”10・23通達”は、 思想・良心の自由を定めた憲法と、「不当な支配」を禁じた教育基本法に違反するから無効とし、教職員一人につき3万円の慰謝料支払いを都教委に命じていました。都教委側はこの判決を不服として、東京高裁に控訴していた裁判で、5回の口頭審理と4年4ヶ月の歳月を費やして争われ、昨日が控訴審判決の日でした。 12時30分、東京高裁・地裁前に到着すると、既に数十名の方が、僅か46枚の傍聴券を求めて並んでいます。知っている原告の方もビラを配布しています。「弁護士会館」を出発した原告団は既に到着していたようで、時が経つにつれ列は次第に膨れあがっていき、締め切り13時には206名に達し、直ちにコンピューター抽選が行われ、その結果が貼り出されました。4倍強の倍率。向丘高校の元同僚Sさんは当選、Tさんと私は落選と明暗が分かれました。私は、その後報道陣でごった返す位置に移動し、判決結果の速報を待ちました。(写真:報道陣が多数詰め掛けた)
13時15分には開廷し、主文だけ読んでの閉廷が予想され、13時20分には、弁護士による速報がもたらされるとのこと。今や遅しとの思いでその時を待ちます。正面玄関から弁護士が一人飛び出してきて、幕を掲げます。そこには「不当判決」の4文字が。愕然たる思いでその4文字を見つめました。弁護士と主催者の簡単な判決解説の後、不当判決に抗議するシュプレヒコールを裁判所前であげます。(写真:不当判決の幕)
その後場所を「社会文化会館」に移しての報告集会。こちらにも参加して来ました。何故こんな判決が出たのか、判決の骨子を早く知りたくもありました。弁護士10数名から、不当判決への無念の思いや判決の内容が語られる最中に判決の「骨子」が配られ、私も熟読しました。
「原判決を取り消す」とありました。東京地裁への差し戻しではなく、一審破棄の判決です。「国歌斉唱義務不存在確認等の請求」及び「処分差止めの請求」については、訴えの利益がないとして請求を却下。10・23通達及び職務命令を合憲、合法とし、損害賠償請求についても、これを否定。原告団から見て0点の判決内容です。酷い判決です。
判決文とは何と読みにくい日本語で書かれているのでしょう。一読しただけではなかなか理解出来ない文が続きます。弁護士先生の解説を聞きながら次第に理解を深めていきます。しっかりと読み進むと、提訴内容に一定の判断を下したこの判決、不思議なことに、門前払いの部分があることに気がつきました。
この「処分差止請求」は、その損害を避けるのに他の適当な方法がある、即ち、10・23通達そのもの取り消し訴訟を提起して争えばいいから、訴訟要件を欠くものであるとの一文です。この文に私は一番憤慨しました。4年4ヶ月の時間と労力を費やして、今更「他に救済の方法があるからそちらで争え。こちらの門から入るを許さず」とは話がふざけ過ぎてます。
私も学んだ改正行政事件訴訟法制定の趣旨の「国民の権利救済を広く認めていく」にも大きく背くものです。
私などは「予防訴訟の会の一会員」に過ぎず、遥か遥か遠くから係っていて、時々傍聴に出掛けるに過ぎませんが、原告団の一員ともなり、苦悩の時を過ごし、多くの労力を費やしこの裁判に係っている方達の無念さを思うと悔しさが増してきます。上告審最高裁の多数決が雌雄を決することになるとの事でした。