「6月30日16時 夏越の祓」という天祖神社の掲示が貼り出されたのは、3週間以上も前のことだったろうか。”夏越”と書いて”なごし”と読むことも、その謂れも知らなかった。この地に30年住んでいるが、天祖神社でその様な儀式が行われたと聞いたことも無かった。
「夏越の祓」の謂れについては調べてみた。根津神社でも、他の神社でも6月30日に行われるとのこと。天祖神社で行われて来たかも知れないこの儀式を、人の眼に触れる形で執り行うのだろうと推測し、どんな儀式となるのか、興味を持った。 程なく、通勤途上にある天祖神社の正殿前に木組が作られ、数日して茅の輪も設えられた。これは今年が初めてのことで、ラジオ体操時に隣り合う、神社総務の市村さんからは、若い衆が江戸川まで刈りに行ったと聞いた茅が見事な円を描いていた。脇には茅の輪の潜り方が書かれていて、参拝者は所謂8の字を描いて進むことも知った。かって行ったことのある「豪徳寺」でこれと同じ潜り方をしたことも思い出していた。
さて当日、開催20分前に神社に到着すると凄い参拝者の数である。16時丁度、若い衆が木遣を歌いながら宮司さんを先導して歩み始めた。宮司・役員一同が茅の輪前に整列すると、マイクを握った市村さんの司会で祓が開始された。宮司さん3名の厳かな祓のあと、福田宮司による祝詞が読み上げられた。その後茅の輪潜りなのだが、参拝者の人数が予想をはるかに超えているらしく、全体を3つのグループに分け、グループ毎に宮司さんを先頭に150名ほどが8の字を描いて輪を潜った。私達は第1グルで、第3グループが潜り終えるまで、神社の傍らで待ち続けた。暇だったので第3グループの人数を数えると、約170名。
全ての参拝者が潜り終えた後、福田宮司が次の様な挨拶をした。
「6月30日と大晦日に行われる大祓のうち、6月の祓を特に『夏越の祓』と読んでいます。
『水無月の夏越の祓する人は 千歳の命延ぶというなり』と拾遺集に詠まれましたように、夏越の祓を受けた方は夏を息災に過ごせるとの言い伝えがあります。一茶も『母の分の 一つくぐる 茅の輪かな』と詠んでいます」と。
私は、御利益を信じるという気持ちからでは無く、昔からの儀式の有りように興味を持っての参拝。私の推測では500名以上が参拝した夏越の祓は、大盛会のうちに終了した。