徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

捨て犬ラックの物語…第九話 「イヌパンチッ!!」

2007-11-01 18:00:00 | 捨て犬ラックの話
 猫の特技にネコパンチ…というのがあるらしく…これがなかなか強力なんだそうだが…犬のパンチはどうなんだろう…?
それ以前に…犬はパンチ攻撃を…するんだろうか…?

 犬の場合はパンチを食らわすよりは…噛み付く方が得意かもしれない…。
何か動くものを捕まえる時に…前足で押さえる…という行動は見られるが…パンチして相手をノックアウトさせるようなところは…見たことがない…。
鼻黒のパンチは…イモムシにさえダメージを与えられなかったし…。

 その日も…家に居たのはラックとdoveだけだった…。
doveが何をしていたか…についての記憶はないが…おそらく何かの用事で二階から降りてきたところだったと思う…。

 暑過ぎず…寒過ぎず…ぽかぽか陽気のお昼頃…ラックはいつものように自分の毛布を干して…気持ち良さげにその上で寝ていた…。
…はずだったのだが…。

 いきなり…ギャインッ!…という悲鳴が聞こえた…。
何事かと思い…慌てて庭へ出てみると…こちらを見ながらヒ~ヒ~シュ~シュ~言っている…。
前足片方…お手の体勢のまま…。

(痛いよ~痛いよ~!)

あんまりチョンチョコピ~だから…こけて骨折でもしたか…?

近付くと訴えるようにヒ~ヒ~ピ~ピ~と鼻を摺り寄せてくる…。
相変わらずお手の体勢…。
doveに前足を見せようとするのか…懸命に差し出す…。

(ここ…doveちん…ここ痛いの~…!)

足がどうかしたには違いないが…?

 辺りを見回すと…毛布の傍に巨大なスズメバチ…。
すでにご臨終…。
噛まれた後はないから…思いっきり踏んだか…叩いたか…。
スズメバチはミツバチとは違って…刺しても自分が死ぬことはないので…そこに転がっているからには…ラックにやられたとしか思えない…。

(あいつがチクッとしたんだよ~!)

さて…どうするか…?
ハチの毒を解毒するには…朝顔の葉っぱの汁を使う…が…。

それは…祖母がやっていた治療法だった…。
けれど庭にはまだ…朝顔はなかった…。

ヨモギで…やるか…。

 そう考えて…ラックが届かないところに何本も出ているヨモギの葉をできるだけ摘み取り…汁を絞った…。
ラックの前足には毛が生えているので…一枚や二枚の絞り汁では役に立たない…。
前足全体が濡れるくらいの汁をかけてやった…。

 スズメバチの毒がどれほど危険か…などということは…まだ町の人間にはそれほど知られてない頃だから…ハチに2度刺されると命に関わる…程度の知識しかなかった…。
その時は…1度刺されただけでも死ぬことがある…なんて考えもせず…悠長な手当てをしたものだ…。
後から思うと…ぞっとする…。

 痛みが消えたわけではなかろうが…痛い前足に何か冷たいものをかけて貰い…頭を撫で撫でして貰って…少しは落ち着いたのか…ヒ~ヒ~…は止んだ…。
自分で前足を濡らしているヨモギ汁を舐め取り…続いて…よくよく前足を舐め…イヌ式治療を始めた…。

 その間にスズメバチの死骸を処分したが…そのでかさといったら…doveが生まれてからそれまで見たこともないような大きさだった…。
今の家に時々現れるスズメバチを見ても…あのスズメバチほど巨大ではない…。
森が近いので…住んでいるハチも町に居るものとはスケールが違うのだろう…。

 二日ほど…気分が良くないようだったが…ラックはまた…元気になった…。
なんでもなかったように毛布を振り回し…ガツガツと御飯を食べた…。
犬の持つ自然治癒能力とはすごいものだ…。
人間なら…病院送りだろうに…。

これに懲りて…ハチに手を出さないで居てくれると良いんだが…。
二度はないぞ…。

チョンチョコピーの悪戯好き…何にでも手(イヌは口…かな…?)…を出そうとするラックを眺めながら…心からそう願うdoveだった…。




注)アサガオは虫刺されの民間薬ですが…ヨモギは痛み止めや止血の民間薬です…。
調べてみると…ヨモギも虫刺されに効くことは効くらしいのですが…。 
メインの効能ではないのでしょうね…。


次回へ…。





この物語を読んでくださる方が…捨て犬や捨てネコについて少しだけ…興味を持ってくだされば幸いです…。


この物語を書く決心をさせてくれた記事です。

http://blog.goo.ne.jp/wildboar_36/e/a86629d45b6e4487bf2eecdc41ab92b0