7日の管首相記者会見でただ一点注目していたのは「東京オリパラはやるのか」という質問が出るかどうかだった。結果は、海外メディアのロイターだけ。あれだけ官邸に管理された記者会見では無理も無い。
しかし、全てが手遅れになって今日の爆発的なコロナ感染を招いたことを考えると、「この件には触らずに」というメディアにも国民にも蔓延する態度は開催国としての責任としてどうなのか。
国内代表選手で決まっているのは2割程度とも聞く。これからパフォーマンスを上げなければならない時期を迎えて、口には出せず精神的に辛い思いをしている選手も多いはずだ。
管首相は答弁で「コロナ対策に万全を期す。ワクチンを打てば大丈夫」と言い、森実行委員会会長に至ってはスポーツ紙のインタビューで「準備は出来ている。7月のことをどうして今議論しなければならないのか」という驚くべき発言だ。
そこにあるのは「決めたからにはやる」という熱に取り憑かれたような硬直化した思考と「利権をどう回すか」という凡そスポーツからかけ離れた現実だ。「アスリート・ファースト」なる言葉遊びさえも虚偽である。
1964年の東京オリンピックを中学生で迎えて熱狂し、学生時代も今もスポーツに親しんでいるが、2020東京オリンピック誘致には懐疑的だった。“アンダーコントロール”は驚くべき嘘だし、開催時期を日本では蒸し暑い夏にすることが最初から誘致条件になっていたからだ。
最近、IOCの最古参のパウンド委員が「最大の問題は新型ウイルスの急増。開催できるかどうか不透明だ」との見解を示し(BBC)、国内の医師が「変異種が拡大しており、オリンピックを開催したら日本から世界にバラ播かれてスペイン風邪と同じ状況になる」(文化放送)と正面切って警告した。
開催予算も昨年の公表時から2,940億円増えて1兆6,440億円に膨らんだ。この先コロナ対策960億円をはじめ、さらに増額されるだろう。国会審議の必要の無い巨額の「予備費」から充当されることが容易に想像される。
早期に東京オリ・パラの中止を決定し、開催経費や予備費から新型コロナウイルス感染拡大防止対策に回したらどれほど有効な手を打てるだろうか。
後手後手に回る菅政権。出来るだけ国内の感染状況を軽く見せておいてオリンピックに突入しようとする政府の目論見が感染拡大の惨状を招いた。
“コロナ対策の急所”はオリ・パラの早期の中止決定である。国内マスコミは議論を巻き起こして欲しい。