もう20年くらい前のこと、小樽の寿司屋の大将に話しを聴きに行ったことがあった。
ネタとコメが命の寿司屋。道産米をどう見ているか知りたかった。
北海道産のコメを道民に沢山食べて貰うためにどうしたら良いか、道の農政課題の一つでその一端を担っていた。
「そりゃあ旨ければ食べるんでないかい」「早く良いコメを作ってよ」
そんな同じ答えが誰からも返ってきた。
「きらら397」という旨いコメがデビューしていたのに。
当時、道民が食べているコメのうち、道産米が占める割合(食率)は5割を超えたくらい。
8~9割の東北のコメどころには遠く及ばず、本州産の米を食べている農業関係者も珍しく無い時代だった。
寿司屋の大将は予想通り歯牙にも掛けない返答だった。
使っているのはコシヒカリという。仕入れ先の業者の60Kg詰めの紙袋を見せてもらうとどこにも証明する記載は無い。
大将は「出入りの問屋がそう言うから買っている」と笑ったが、食味に確信を持っていたにしても「客にうちは北海道のコメ、とはなかなか言えない」というひと言がショックだった。
その頃から「10年以内のコシヒカリ並みの品種の開発」と「府県のコメどころ並みの食率80パーセントの達成」を柱に品種開発の加速と消費拡大の取り組みが本格的に始まった。
1月11日付け北海道新聞の記事で「ほしのゆめ」「ななつぼし」「ゆめぴりか」などの全国トップクラスの優れた道産米が相次ぎ生まれた経緯が書かれていて、〝やっかいどう米〟と揶揄されていた道産米のPRに駆け回ってた頃のことを懐かしく思い出した。
人口減少、食生活の多様化で最近はコメの受給バランスが崩れて価格も下がっているようだ。一人年間の消費量も戦後の120Kgの半分以下である。
弁当などの食品加工場では炊き上がったコメが日に数トン単位で破棄されているともいう。
コンビニなどの外食産業のオーダーが当日に決まったりすることによるものらしい。
夏に農作業に行き、生産者が丹精込めて農作物を作る姿を見るにつけ、無駄なく消費され、農家経営が安定して欲しいと願う。
《田植えに行ったT農場さんの「ゆめぴりか」玄米 60Kg》