アメリカ大統領を退任したトランプ氏は、ワシントン・ポストのファクトチェックによると、在職の4年間で虚偽や誤解を招く発言が23,000件あったという。都合の悪い報道は全て〝フェイクニュース〟で片付け、虚実入り混ぜて政権を維持してきた。
そのトランプ氏から何故か〝見込まれた〟安倍前首相は、衆院調査局によると、森友疑惑で財務省、会計検査院の報告内容と異なる国会答弁が118回あったという。「モリカケ」「桜」では都合の悪いことには答えず、公文書を隠蔽・改竄・破棄してまでして権力を維持した。
期せずして似た者二人がその座から去った。残されたもの、証言から真実を究明してこそまともな政治が戻ってくる。
かつて、ベトナム戦争を巡るアメリカ国防総省の秘密文書(“ペンタゴンペーパー”)が暴かれ、それが契機になって戦争が終結に向かったことがある。学生の頃だった。
ジャーナリストの伊藤芳明氏がTBSラジオで、1月7日に亡くなった元ニューヨーク・タイムスのニール・シーハン記者のことを伝えていた。機密文書を公にしたその人のことだった。
シーハン記者は派遣されたベトナムの実態と米軍発表に違いがあり過ぎることに疑問を抱き、帰国後も真実を追い求め、秘密文書に辿り着く。“ペンタゴンペーパー”と呼ばれた記憶がある。
機密文書はそもそもは国防総省の専門家が後世の検証のためにと持ち出し、閲覧を条件にシーハン記者にリークしたものだったという。
そこには20万を超える大軍を派遣しなければならないこと、戦争に勝ち目はないこと等々が分かっていたにも関わらず、ケネディら歴代大統領が国民を欺き、泥沼の戦争に突き進んでいたことが7,000ページに亘って綴られていた。
シーハン記者はその専門家との「閲覧」という約束を破って密かに7,000ページをコピーし、公にしたという。
二人とも後世になって「記録文書は米国民の財産」という良心に従った行為だったと述懷した。同じ二人でも、トランプと安倍氏とではレベルもスケールも違いすぎる伊藤氏の話だった。
コロナ問題ですっかり隅に追いやられているが、安倍前首相の「桜」問題の説明に多くの国民は納得していない。内部告発が望むべくもない中で、ジャーナリスト、メディアの奮起無くして真実は明らかにならない。