コメ価格が高騰している。獲れているのに出回り量が少ない。
政府は流通で不足している量の見合いで備蓄米21万トンの放出を決めた。
いろいろな原因の一つに投機筋の買い占めが言われていて、遠い昔の〝山買い〟を思い出した。
〝山買い〟という言葉を知ったのはもう半世紀前の20代の時に道内のコメ産地に勤めていた時だった。
夜陰に乗じて商人が小型トラックで稲作農家の庭にやってきて、政府買取価格より安い値段で買い叩いてゆく。
「不作の年に現金がすぐ欲しい農家は農協に黙って出すんだ」、「今年はいつになく出没しているようだ」とベテランの先輩職員は収穫の秋になると話をしていたものだった。
自民党の農林部会の常連は〝農林族〟と呼ばれて農業政策に対して隠然たる影響力を持っている。業界、現場の団体、農家とも繋がっている。
今はどうか分からないが以前はいい悪いは別にして作物別、畜種別に〝ドン〟がいた。
備蓄米21万トンの放出はあまりに対応が遅いと農水省が袋叩き叩きにあっているが、〝農林族〟はこの度の騒ぎをどう見て来たのか気になるところだ。
燃料費高騰、資材高騰、人件費高騰を米価になかなか乗せられなくて我慢をしてきたコメ農家、業界にとって「物価高騰」は「いい話」として内心は歓迎していたのではないか。
それが対応の遅れになっていたとしたら消費者の方を向いていないと言われてもしょうがない。
コメ価格は下がるだろうか。
緊急的に流通の不足分を埋め、いずれ回収するのであれば価格はコメ不足が顕在化してきた去年の夏以前のレベルには戻らないだろう。
現代の高く〝山買い〟されたコメが直ぐに出てくるかどうか、市場価格次第だ。
卵が先か鶏が先か、〝農林族〟の力も試される。