NHKの朝の連続ドラマ。
今は土佐の造り酒屋を舞台に展開している。
主人公の万太郎は幼い頃からの興味を突き詰めたくて、東京で植物学の道に歩むことを決意、酒蔵の当主を姉の綾に託す。
酒蔵が女人禁制であることをドラマで知り、道東の根室市にある酒蔵「碓氷勝三郎商店」のことを思い出す。
今の第5代当主は碓氷ナミ子さんという女性で、第4代勝三郎の一人娘だ。
当主は歴代〝勝三郎〟を名乗ってきたが、流石に女性ということで本名のナミ子で通していると聞いたことがある。
銘柄は「北の勝」。
特に、毎年1月に販売される「搾りたて」はほんのり甘く、飲み口が良くてついつい飲み過ぎ、〝腰を抜かす〟ことで有名だ。
その昔、出張で根室に行った時に呑まされて、酒の神様から呆れられるほど見事に〝沈没〟したことがある。
二次会に行けず、ホテルに担がれた。
何せアルコール度数は18・5度もあり、加熱して発酵を止めていないので体内で二次発酵?するとの由。
旅人が酒席で注ぎに回っているうちに必ずそうなるのを地元の人は密かな楽しみにしているようだ。
根室でしか飲めず、手に入れるのは至難の業の幻の酒である。
碓氷勝三郎商店は新潟県出身の初代・碓氷勝三郎氏(1854~1916)が1887年(明治20年)に創業した。
北洋漁業に従事した漁師に冬場の仕事の場を確保するため、酒造りを始めたと言われる。(かつての鰊漁場である留萌の「國稀酒造」と似ている。)
漁業やタラバガニなどの缶詰製造などで財を成したが、4代目の時に連帯保証人として、突如二十数億円に上る負債が一人娘のナミ子さんにのしかかった。
これもドラマになりそうだ。
ナミ子さんは、缶詰製造会社を失ったが、初代から続く屋台骨の酒造りは守り抜いた。
その中で、「トップがいいふりをしない、うそをつかない組織は事業も人もまっとうだ。」という教訓を得たという。
1999年、杜氏が「少し違う程度、これでも良い。」と言う製品を「香りが弱い、うちのお酒ではない。」と出荷停止を決断したのは有名な話しである。
酒は全量を道内の問屋に卸し、中卸し~小売りの流通に拘った「商店」経営に徹している。お客さん第一主義だ。
朝のテレビドラマでは綾さんは若いながら気丈だ。
きっと誠実な信頼関係に結ばれた真剣勝負の「峰の月」造りに取り組むことだろう。