2014年10月に京都大学総長に就任した山極寿一氏が6年の任期を満了して9月いっぱいで退任した。“ゴリラ総長”の異名がある。2017年6月に国立
大学協会会長、同年10月に日本学術会議会長に就任している。
専門の霊長類、特にゴリラの社会の成り立ちから人間社会を見た言動は興味深い。
ゴリラは平和を求める動物で、猿と違って餌を共有し、胸を叩くドラミングは戦いの宣言ではなく相手に和睦を求めるサインなのだということを
知った。ヒトは祖先の良さを失ったのではないか。
山極氏が退任会見を開かず、Hpに所感を掲載するという異例の形を取ったのは大学事務局によると「日本学術会議会長などを兼ねていたため日
程確保が難しかった」ことなどが理由とされている。しかし、国大協会長として、文科省の大学運営への介入、入試方法の変更等に対して、明確
な反対を表明した山極氏からは事務局の説明を額面どおりに受け取れないでいる。
菅首相は5日の参院予算委員会で、日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否したのは、内閣府との間で学術会議が行っていた事前協議がなか
ったことが要因だとの新たな見解を示し、「以前は正式な名簿の提出前に一定の調整が行われていた」「今回は推薦前の調整が働かず、結果とし
て任命に至らない者が生じた」と述べたという。
邪推である。山極氏は慣例に基づく事前協議に応じなかったのではないか。退任会見を開かなかった理由は地元京都新聞は「対話重視」を掲げた
が構内のタテ看板撤去、老朽化した吉田寮からの退去で学生との間で必ずしも成果を上げられなかったからではないか」との見方もあるが、本当
のところはくすぶり始めていた学術会議への政府介入を語らなければならなかったからではないかと思っている。抗議の姿勢かもしれない。
2018年11月13日付けの学術会議の内部文書があり、「総理に推薦のとおり任命すべき義務があるとまでは言えない」「総理が、任命すべき会員の
数を上回る候補者の推薦を求め、その中から任命することも否定されない」との記述があるという。(東京新聞2020.11.1Web版)
・学術会議事務局は「当時の山極会長に説明した。どう受け止めたか分からない」
・山極会長は「まったく知りません。文書があることも聞かされていない」
・内閣法制局は「内閣府と会議のやりとりは知らない」
と言うのが三者の回答だ。(東京新聞2020.11.1Web版)。
梶・現会長とともに、山極前会長が経緯を一番知っているのかもしれない。