15日午前7時50分ごろ、大津市役所(同市御陵町)別館2階の市教育委員会教育長室で、同市の澤村憲次教育長(65)が、入ってきた男にいきなりハンマー(長さ約30センチ)で右側頭部を殴られた。澤村教育長は右目上を切る軽傷。市教委の男性職員が、男を取り押さえ、駆け付けた滋賀県警大津署員が殺人未遂容疑の現行犯で逮捕した。
逮捕されたのは、自称さいたま市内の大学生の男(19)。同署によると、男は大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒(当時13)が自殺した問題を巡り「テレビやインターネットの報道を見て(澤村教育長が)真実を隠していると思い、許せないと思った」などと供述し、容疑を認めている。
捜査関係者によると、男は「澤村教育長を殺すつもりであらかじめ用意していたハンマーで頭を殴ったことは間違いない」などとも供述。男はほかに針金も持っていたといい、さらに詳しい動機などを追及している。
男子生徒が通っていた中学校では、7月9日に中学校や市教委を爆破する予告の封書が届いたため同10日を臨時休校にし、その後、同署は関係者らへの警備を強化していたという。
澤村氏は平成20年から教育長を務め、男子生徒の自殺後学校に指示していじめ調査を指揮。しかし、今年1月に越直美市長が就任したことを受け辞任したが、2月に教育長に再任。男子生徒の自殺問題を巡っては、越市長が、遺族が市などを相手取った民事訴訟で和解の意向を示したのに対し、一貫して「いじめと自殺との因果関係は不明」として裁判を継続する姿勢をみせていた。
澤村教育長は、自殺した男子生徒が通っていた中学校の校長を平成18年4月から務め、20年に教育長に就任。前大津市長の退任に伴って一度辞任したが、今年2月に再任されている。
市教委関係者は「地元の教育行政に精通していたので再任をお願いした」と説明したが、別の関係者は「在任中に起きた自殺問題の対応にあたってもらうことが最大の理由だったのでは」と明かす。
ただ自殺が発覚した当初はいじめとの因果関係を認めず、今年7月に越直美市長が男子生徒の遺族との和解の意向を示した後も「家庭の問題も明らかにされるべきだ」などと発言。男子生徒が自殺した翌月には、市長の代理でオーストラリアへ視察旅行していたことが明らかになった。