大津市の中2男子生徒自殺問題で、男子生徒をいじめていたとされる同級生が今年5月、女性の担任教師に暴行した問題で、教師は小指の骨折だけでなく、顔や胸など全身の計6カ所を負傷していたことが22日、関係者への取材で分かった。大津市教委は当初、報道機関の取材に「暴れる生徒を教師が止めようとして小指を負傷した」と説明していた。
関係者によると、体育館で修学旅行の事前指導中に同級生が家に帰ろうとしたため、教師が制止しようと更衣室に連れて行った。すると、男子生徒から拳で上半身を殴られたり、下半身を蹴られるなどの暴行を受けたという。教師は小指骨折のほか、顔や胸、脇腹など計5カ所に打撲やすり傷を負い、病院で全治1カ月の重傷の診断を受けたという。
大津市教委は、この問題が明らかになった今月9日、取材に対し小指骨折しか説明しておらず、「暴れる生徒の足が当たった。教育的配慮から警察に被害届は出さない」などと説明していた。
同市教委は一連の対応について、「学校から、顔や脇腹をたたいたり蹴ったりしたという報告はあったが、具体的なけがの報告はなかった」としている。滋賀県教委は6月、市教委に被害届を提出するよう指導している。
大津市の中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題で、大津市教委の澤村憲次教育長がさいたま市の男子大学生(19)=殺人未遂容疑で逮捕=に襲撃された事件にからみ、男子生徒の父親が21日、「暴力に訴えることだけは行わないで。息子の本望ではありません」と呼びかけるメッセージを、裁判支援のため代理人弁護士が開設したホームページに掲載した。
父親は襲撃事件を「大変悲しく思う」とし、「大学生にも何らかの痛烈な思いがあったのは分かるが、暴力に訴えても何の解決にも至らない」と諭した。
一方で、「息子に対する『いじめの暴力』の存在を知ったとき、相手を殴ってやりたい衝動に駆られた」「そういった行動に出た場合に息子は喜ぶのだろうかと必死に考えた」と、揺れた心境を吐露。
その上で、「暴力に訴えていた場合には恐らく今回の『いじめ』の問題や『学校や教育委員会の現状や隠ぺい体質』の問題がここまで明るみにされることはなかった」とつづっている。
また、「今回の問題に対する意見として、お住まいの地域の学校や教育委員会、市や県に対して再度見直しを図っていただくという訴えや行動を起こしていただければ、真の解決に結びついていく」とも呼びかけている。