「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その2
蝦蟇が、怪しい光を吐く その1
明治二十八年のこと。
会津若松の上市町の本屋の龍田屋(今は無い)の主人が、夏の或る夜に外出先から帰ると、納屋と倉庫の間の狭い路次の地面から、照明燈を差向けた用に、淡い一道の光の筋が見えた。
倉庫の白壁を照らしていたので、怪しみながら路次戸を開けて、内へ入って見た。
怪光は、地面の一点から発していたので、鍬を入れて掘って見ると、一疋の大型の蝦蟇がいた。あの怪光は、そのロから吐き出されているのであった。そして、蝦蟇は子供の悪さらしく、背中から五寸釘が串差しに剌してあった。
ところが、この時、家では八九歳の息子が高熱に悩まされて、治療されている最中であった。
病因はこの蝦蟇の一念であろうと、主人は畏れて、ただちに釘を抜いて、蝦蟇にわびを言った。
傷のところへは、蝦蟇の油を塗ってやって、庭内の安全な場所へ放った。すると、かの怪光も止み、また息子の病気も快癒したと言う。(実見者のH氏談)
蝦蟇の口中から光線を放射する、と言うようなことは、実際に見た者でないと信じられぬ事実ではある。しかし、人間や高等動物の心霊は発光体であることが、近年科学者の実験によって、確認されたことであることを思えば、この話もウソ偽りでないことは明白である。
蝦蟇が、怪しい光を吐く その2
上記の話(蝦蟇が、怪しい光を吐く)と酷似した事実が、寛政(1789~1801年)頃に、岡山藩の牧村某(なにがし)方にもあった。
それは、或る夜、七歳の小児が夕方から熱病に罹り、昏睡中に数回ワッと泣出した。
泣き止んでは又泣出す。
何の病か一向に解らぬが、とにかく医者を迎えにやってから、便所へ行くと、土蔵の土台の所から青い火が燃えていた。
そうして、それと同時に、子供がワッと泣出した。
青い火は一旦消えたが、また燃えると、同時に子供が泣き出した。
それで、怪しんで便所から出て土蔵の際へ行って見ると、子供の戯れらしく、石を積み草を挿して墓場がまねてある。
それを取りのけて下を見ると、大きな蝦蟇が釘に貫かれたままで埋められてあった。
が、墓は死にもせず片息で苦んでいる。
すぐにその釘を抜き取り、薬をつけて放ってやったら、子供の熱が引き去り、泣くのも止った、
と言う話がある。