縄抜けと狂歌
2024.3
役人をだまして、縄抜けし、逃げ去った話が、
「寝ものがたり」にあります。
津軽越中守殿(つがるえっちゅうのかみどの)の家中に遠藤三清(みきよ)と言う茶人がいた。
重い罪を犯したので、縛られて、見張り番を付けられた。
夜分になり、見張り番たちが、居眠りしたので、三清は、大いに怒り、
「その方達は、大切な囚人を預りながら眠るという事があろうか。
不届き至極である。
某(それがし)だから良かったものの、ずるい者ならば、縄抜けして逃げ去ったであろう。」
と声高に叱りつけた。
見張り番の者達は、申し開きできず、一言も言えなかった。
さて、暫くたって、三清は、すっかり眠ってしまった。見張り番の者達も、心がゆるんで、我を忘れて寝てしまった。
うまくやろうと三清は、以前から縄をゆるめておいたので、なんの苦もなく縄ぬけした。
側にあった行灯に、一首したためて、いづこともなく逃げ失せた。
おさらばよ わしゃゑんど(えんど:江戸)に 居(い)ぬからは あとでゆるりと たづね三清(尋ね 見 来よ)