もう一つの「野馬台詩」
「兎園小説拾遺」には、面白い話が載っていますが、これに「野馬台詩(やまたいし)」を見つけました。
一般に知られている「邪馬台詩(やまたいし)」とは、全く違います。
兎園小説拾遺の「文政13年雑説併狂詩二編」には、二つの狂詩が、記載されています。
そのうちの一つが、流行の野馬台詩とあります。
一般に知られている「邪馬台詩」とは、全く違います。
また、通常の「邪馬台詩」は、立派な漢文ですが、
ここのは、擬漢文です。ほとんど、江戸時代の雑文です。
解釈が出来にくい部分がありますが、わかる範囲で、読み下しました。
15行目の「雲峰婆々古狸喰」は、この文の後に、「麻布大番町奇談」という項があります。
雲峰という人の家に長く仕えた、老女が、タヌキに喰われたという話です。
他の、詩句にも、それぞれ何かがあるのでしょう。
以下の文?表?は、原典より横書きにしたものです。
通から始まり、声で終わっています。
滸一水 好―外 御―年 寺―責―亦―来
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松 狩―牧 存―祭 当 此―節―和 再
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木 人―生 力―士 慎―至―必―尚 皮
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踊―四 捕―大 馬 織―薩―布―太 貂
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被―出 評―町 蹄 羽―薄―紋 布 笠
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叱 逃―判 川―小 通―人―小 藤―組
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寄 本―所 煙―裏 声―之―咄 暑―残
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合―咄 狼―煙 苦 日―暮―御 世 止
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目―亡 成―尺 高 日―日―穏―上 雨
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高 尺―三 六―松 婦―悞―倉―千 喰
丨 丨 丨 丨
利 打―悪 当―殺 小 雲―箱―両 狸
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為―闇 口―別 玄―関 峰―婆―婆―古
流行野馬台詩
小川町評判、土浦侯、馬に蹴られし事也。雲峰婆婆古狸に喰る。
流行野馬台詩の記事の一篇を以下に録した。
庚寅(かのえとら)の秋八月、ある人に借りて、抄写した。
通人小紋薄羽織、 通人は、小紋に薄羽織(うすばおり)
薩布太布藤組笠、 薩布(薩摩上布?)、太布(たふ) 藤の組み笠
貂皮再来亦責寺、 貂皮は再び来たりて、亦 寺を責む
此節和尚必至慎、 此の節の和尚は、必ず慎(つつしみ)を至(いた)す
当年御祭存外好 当年の御祭りは、存外に好し(ぞんがいによし)
牧狩水滸松木踊、 牧き狩り 水滸 松木踊り(お祭りの出し物でしょう)
四人生捕大力士、 四人を生け捕り 大力士、(これも、お祭りの出し物でしょう)
馬蹄小川町評判、 馬蹄 小川町の評判
逃出被叱寄合咄、 逃げ出し、被叱(しかられる) 寄合咄(よりあいばなし)
本所狼煙々裏苦、 本所の狼煙(のろし) 煙の裏(うち)は苦し
高松六尺成三尺、 高い松は六尺 三尺に成る、
亡目高利為闇打、 亡目高利(盲目の高利貸し)は闇打ちにあう
悪口別当殺玄関、 悪口の別当は、玄関にて殺される
小婦悞倉千両箱、 小婦(わかい女は)は、千両箱を悞しみに倉う(楽しみにしまう)、
雲峰婆々古狸喰、 雲峰(人名)の婆々(ばばあ:ばあや)は、古狸に喰われる
雨止残暑世上穏、 雨は止んで、残暑ありて、世上は穏やか
日日日暮御咄之声。 日日日暮(ひび にっぽ:一日中)御咄し之声(おはなしの声)
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