「天草島民俗誌」河童雑記 その11 から その15
2021.11
鬼池村 「天草島民俗誌」河童雑記 その11
姿はベンタ人形(弁太人形:桐の丸太を削ってつくった人形)に似ている。
鳴き声は、綿くり機械の鳴る様に、キーキーキーと言う。
近来でも、池の傍の茄子やカボチヤ等に、爪のかたをつけたりなどして、悪戯(わるさ)をする。
五十年程前に、あまり農作物に害をするので、人々が罠をかけておいたら、ひっかかった。
人が調べに行ったら姿が見えない。
かかって居ない、と思っていると、連れて居た子供が、横の深い穴の中に落ちこんでしまった。
これは、大方 河童の所業(しわざ)である、と言われた。
それで、村の者が大勢集って、穴の中に石を投げ込んだ。
中から「沢山ナスを持って来れば、子供を返してやる。」と言う声が聞こえた。
そこでナスを持って来たら、子供を返してくれた。
鬼池牟田の池の傍に、高さ二尺位の石があって、それに何か字が彫ってある。
この字が消えるまで、人間の尻をとってはならぬ、という約束がしてあるそうである。河童は、早くそれを消そうと、毎晩 草履でこすっているそうである。
これと全く同型の話が手野村にもある。
又、今は思ひ出せないが、何村かの日露戦役の記念碑か何か字の彫った方の石の面が凹んでいるとか云う。
これも、毎晩 河童が早く字を消して、人問の尻の御馳走になろうと、削っているのだ、と聞いたことがある。
宮野河内村 「天草島民俗誌」河童雑記 その12
河童が山へ登る時、男、女、男、女、と順々に数万匹列をなして行く。
男がギイと鳴けば、それにつづけて女がトンという。
その時は、非常に腥い臭がするという。
人間から腕を取られたときは、その晩すぐ魚を下げて貰い返しに来る。
河童の腕は、一晩経てば、もうつぐことが出来ないからである。
亀場村 「天草島民俗誌」河童雑記 その13
水に泳ぐときは、釜の尻のススを顔に塗っておくと尻をとらぬと云う話。
小宮地村 「天草島民俗誌」河童雑記 その14
馬場上小平に、渡合川の上流に「わたせ」といふ所がある。
ある時、猿廻しがそこであまり暑いので猿を木につないで泳いでいたら、河童に尻をとられてしまった。
猿は、河童を狙って飛びこもうとしても、自由がきかないので一生懸命にもがいていた。
通りかかった男が繩をきってやると、猿は川の中に飛び込んで、河童を捕えてあがつて来た。
同じ村の字(あざ)棒鶴のお宮の前を小川が流れている。
その川に大きな石がある。
その石にも字が彫ってある。
夏の頃、子供がこの川に泳ぐときは、必ず泳ぐ前にこの石に水をかける。
この石の字が消えると、河童が来て尻をとる、と言われている石である。
新合村 「天草島民俗誌」河童雑記 その15
お宮の横を、河童が沢山 川へ下りて行く。
何時か婆さんが洗濯中に河童にとられた。
そこの大きな岩の下に刀を埋めてから出なくなった。
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