「日本原子力学会」という組織がある。原子力の平和利用を前提とし、
原子力の開発発展に寄与することを目的とした学会である。
他の組織と同様に「倫理規程」がある。
その少し変わった制定の過程を、7月28日付、朝日新聞「論壇時評」で知った。
作家の高橋源一郎氏が、「情報公開と対話」、「スローな民主主義にしてくれ」、
の中で紹介していた。
「原子力学会倫理規定」は、学会のホームページに掲載されている。
ここでは、原子力技術が両刃の剣であることを自明のこととして押さえ、
自分たちの研究が社会に及ぼす責任の重大さと、
その倫理について重い努力義務を課している。
「規程制定の経緯」が詳細に検討され、数次に亘り改訂が重ねられ、
数多くの「倫理規定への意見」に対し、丁寧に回答している。
その中で、「反原発」の意見を持つ者は、入会できないかという意見がある。
これに対し、「倫理規程制定委員会」は下記のように答えている。
「原子力利用そのものに反対であるなら、代替策を明示し、
現在の原子力利用をどうしていくのかを示す必要があります。
そのための不断の努力をする者は会員の資格を有すると考えます」
学術組織であり、何かを作る、行動する組織でないから、
懐の広いことを言えるのだという見方もできる。
しかし、反対者を排除したがるのが、これまでの多くの組織のあり方だった。
組織の存在そのものを否定する意見の持ち主も受け入れるという立場の表明は重い。
そこに、高橋氏は、「スローな民主主義」の可能性を見ている。
私たちのささやかな組織においても、
ウォーキングの普及、発展について真摯に向かい合うものであれば、
異論も排除せず、話し合いを通じて、共通理解を探るおおらかさをもちたいと考える。