天地を 照らす日月の 極みなく あるべきものを 何をか思はむ 

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思う

神経細胞

2010年04月01日 | 科学
 神経系を構成しているのは「神経細胞」と「グリア細胞」(神経細胞を覆っている細胞の総称)です。
 神経細胞の細胞体の構造は、他の細胞と変わらず、遺伝情報が書かれたDNAを含む「核」、エネルギーをつくり出す「ミトコンドリア」などで構成されています。核の周辺部には染色されたニッスル物質が存在し、神経細胞でも細胞体でタンパク質が合成されます。他の細胞と大きく違うのは、細胞体から長い「軸索」と、木の枝のように複雑に分岐した短い「樹状突起」が伸びていることです。これらの突起は、別の神経細胞とつながり合い、「神経回路」を形成しています。隣接する細胞に接続する数ミリメートル程度のものから、脊髄中に伸びる数十センチメートルのものまであります。
 神経細胞は、ひとつの神経細胞に複数の細胞から入力したり、活動電位がおきる閾値を変化させたりすることにより、情報の修飾を行います。神経細胞の中には、光や機械的刺激などに反応する感覚細胞や、筋繊維に出力する運動神経の細胞などがあります。

 神経細胞は、細胞体と軸索と樹状突起で一つの単位として考えて、「ニューロン(神経単位)」とも呼びます。軸索の末端は、こぶ状に膨らんだ形をしていて、「シナプス」と呼びます。シナプスは次の神経細胞と密着しているのではなく、数万分の1mmほどの隙間「シナプス間隙」があります。シナプスでは、電気信号を化学物質の信号に変えて、次の神経細胞に情報を伝達しています。電気信号が伝わってくると、シナプスにある小胞から「神経伝達物質」という化学物質が、シナプス間隙に分泌されます。神経伝達物質が、次の神経細胞の細胞膜にある受容体に結合すると、電気信号が生じて情報が伝達されます。
 軸索は、細胞内外のイオンの濃度勾配を利用して情報を伝達します。一般に、動物の体液には多量のカリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどが含まれていますが、細胞外液と神経細胞の細胞質のイオン構成は通常大きく異なっていて、細胞内外で電位差があります。これらのイオンは細胞膜を透過して拡散します。
 軸索は「髄鞘(ミエリン鞘)」と呼ばれる、絶縁体の鞘で覆われています。脳の中では軸索が密集していますが、髄鞘が電気信号が混ざってしまうことがないようにしています。髄鞘は、一つごとに少しの隙間があり、軸索がむき出しになっています。このくびれを「ランビエ絞輪」と呼びます。電気信号は、くびれからくびれへと絶縁体である髄鞘をジャンプしながら伝わっていきます(跳躍伝導)。
 ニューロンの種類によっては、樹状突起の上に小さなとげ状の棘突起(スパイン)が無数にあってシナプス部位として機能しているものがあります。神経活動などによりスパインの形態が変化し、電流の流れ方が変化したり、シナプスそのものが形成・消滅したりします。このことが、神経可塑性に関連していると考えられています。樹状突起には小胞体やリボソームが存在しますが、軸索にはほとんどありません。

 グリア細胞は神経系を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、神経細胞を覆い、神経系の維持に関与する細胞群のことを言います。神経細胞に対し、位置の固定や栄養素の供給など恒常性の維持を担う細胞、髄鞘(ミエリン)の構成などの機能をもつ細胞、免疫系のような振る舞いをする細胞などがあります。近年、シグナル伝達への関与を示唆する証拠が見つかりつつあり、ヒトの脳では、細胞数で神経細胞の50倍ほど存在していると見積もられています。  
 グリア細胞は、神経細胞を支えたり、栄養を供給したりして神経細胞の働きを助けています。最近、グリア細胞は神経成長因子や栄養因子などを分泌しており、神経細胞の維持さらには再生にとって非常に重要であることがわかってきています。