Friends of Valves 自作真空管アンプ

自作真空管アンプを中心にいろいろ載せていきたいと思います。

送信管2T12Pの特性測定

2023-01-07 22:57:18 | 真空管

あけましておめでとうございます、本年もよろしくお願いします。

すっかり正月休み気分で危うくブログを書き忘れるところでした。何かアンプの製作をと思っていますが、寒い中では、シャーシの加工などが億劫で、部屋の中で気楽にできる測定はいいネタになります。

ということで、今日は2T12Pというあまり聞きなれない球を測定してみました。

2T12Pという球は、ヒータが10V-1.5Aの傍熱型3極送信管でプレート損失が20Wあり、パルス高周波出力で800Wの出力が得られるようです。漁船用の無線機などで使用されたと以前どこかの資料で見たことがあります。

カソードは、2つに分かれておりそれぞれのカソードにグリッドが設けられています。どうもグリッドにはグリッドからのエミッションの防止のためか、金メッキが施されているように見えます。また、セラミックで電極を支持するなど業務用の真空管のような堅牢な作りになっています。

いつものごとく、デジタルオシロと高電圧に組んだ定電圧電源を用いて測定し、測定結果の描画を手動で線をなぞってきれいに成型したものになります。

特性結果は、送信管らしく内部抵抗が高くμも高そうな球です。グリッド電圧が負の領域で使うよりも正の領域で使用した方がアンプとしては使いやすいかもわかりません。そういうこともあり一応、正の領域も測定しておきました。

早速、特性の解析ですが、下記のようになりました。

Vpが750V, Ip 30mA近辺で、rp=5000Ω、μ=28、gm=5.6mSとなりました。

きちんとまだ見ていませんが、グリッド電圧が負の領域では、負荷を10kΩ以上で使用した方がよさそうですね。出力を大きめに取ろうとするとVpにかなりの高電圧をかける必要がありそうです。

オーディオ用アンプとして使用する場合、まずヒータが10Vとトランスの選択肢が狭くなるのと、同じような特性の球であるVT-25/62あたりと比較してしまい、こちらは傍熱管というだけあって少し不利なような気がします。そのため、オークションでも安めに購入することができました。

ただし、面白そうな球だということは間違いはなく、グリッドを負の領域で使用するVT-25/62アンプのような回路とするか、正の領域で使用するダイナミックカップリング回路とするか、回路も音質も異なるアンプができそうで、1粒で2度おいしい仕上がりが期待できそうです。たまにオークションで見かけることがありますので、興味のある方はお試しください。

 

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3極管接続でスクリーン許容電圧を超えていいのかどうか

2022-09-17 21:13:49 | 真空管

先週、6CD6Gで水平偏向管の3極管接続を紹介しましたが、その動作点は、スクリーングリッドの許容電圧を超えたものでした。

安い水平偏向管なので、あまり躊躇なくこういう動作をしましたが、果たしてこういうことをしていいのかどうか、少し考えてみたいと思います。

ただし、確か、ナショナルか東芝の真空管ハンドブックには、「3極管接続時はスクリーンの最大定格電圧を超えないこと」、というような記載がどこかにあったのを見た気がしています。そのため、設計上はそういう使い方は本来だめなのでしょう。

因みに、BRIMAR 6CD6Gの規格表には、下記のような記述があり、最大プレート電圧は、4極管接続時の700Vに対し、3極管接続時は最大スクリーングリッド電圧に引きずられ、200Vになっています。

しかし、そんな硬い使い方をしていては、いつまでたっても水平偏向管は、猫マタギになりますし、新境地を目指すのもマニアの務めだと思っていますので、真空管ハンドブックの記載はあくまで参考ということにします。

冒頭のアンプでは、6CD6Gのダブルカソード管をプレート電圧270Vで動作させ、プレート損失は約18Wと少しオーバーしてしまいました。

早速ですが、5極管の3極管接続時のスクリーングリッドにはどんな電流が流れているのか測定した図を載せます。

(注)Isg2と表記していますが、Isgの間違いです。

この球は、かなり前に測定した別の5極管の3極管接続時のプレート電流Ipと、スクリーングリッド電流Isgを計測したものになります。

その結果、この図のようにスクリーングリッドの動作は、プレートの動作に準じた動きをしていることがわかりました。さしずめミニプレートといった感じです。

この動作によって、真空管自体あるいはスクリーングリッドに危険が及ぶとしたら、どういうことがあげられるでしょうか。

1つは、スクリーングリッドの許容損失を超えることがあげられます。同様にプレート許容損失も最大定格値を超えてはいけません。

これについては、図のようにコントロールグリッドのバイアス電圧で制御可能で、VgによるIsg電流の制限により、スクリーングリッドの許容損失内で動作させればよいことになります。つまりスクリーングリッドに大電流が流れてすぐに許容損失を上回るのであれば、Vgを大きくして流れる電流を制限すればいいわけです。

その分バイアスが深くなるで、ドライブ電圧も高くなります。

では、バイアスが深くなることで発生するインゼル効果はどうだ?

インゼル効果により、カソードからの熱電子がグリッドの負の電圧が及ばない一部分からしか出なくなるので、gmも下がり、本来の特性も変わると思われます。発生しない程度のバイアスとすればいいと思います。

その他、何が考えられるでしょうか。コントロールグリッド(g1)あるいは、サプレッサーグリッド(g3)とスクリーングリッド(g2)間の絶縁耐圧?これを考えるなら、サブミニチュア管やミニチュア管(MT管)なんてもっと狭い電極間隔内で動作していますので、よほど高電圧(kV単位で)をかけない限り大丈夫のような気がします。

他あまり思いつきません・・・

今のところの考えでは、3結時はスクリーングリッドとプレート電流はコントロールグリッドのバイアス電圧で制御可能で、スクリーングリッドとプレートそれぞれの許容損失を上回らなければ、プレート電圧を上げても大丈夫、という解釈です。

これに関し、もし何か抜けている点などありましたらご指摘いただければと思います。

ということで、我々マニアはどんどん水平偏向管を使って、いけない遊びをして、安く、良いアンプを作りましょう。

ただし、このような行いで発生した事故・損失に関し、当方はいかなる補償も負いませんので、悪しからず。

 

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TV用水平偏向管6CD6Gの測定

2022-09-11 20:33:35 | 真空管

このところ少しブラウン管テレビの水平偏向管に凝っています。凝っているといっても手持はそれほどないのですが、多くの水平偏向管はあまりオーディオ用としては、日の目を見てきませんでした。

それは、例えばスクリーングリッドの最大定格電圧が低くかったり、プレートキャップがあったりと、オーディオ用には少し使いづらい点があったりしたからです。なので、ほとんどの球はあまり注目されてきませんでした。しかも、マニアウケも悪く、試聴会で鳴らそうものなら鼻でフンとあしらわれる可能性さえあります。

そんな水平偏向管でもオーディオ用に良いものがあるのではないかと思い、以前から良さそうなものはないか物色していたのでありました。

その中で見つけたのが、6CD6という球です。

6CD6のバリエーションは多く、コークボトルといわれるST型の6CD6Gや、ストレートのT型バルブ6CD6GAがあります。またSTタイプの球には、上記写真左側のようにダブルカソードタイプや、真ん中のシングルカソードタイプの2種類があり、他にトランスレスタイプとして、ヒータ電圧が25Vや、35V、50Vというのもあります。テレビ用というだけあって、バリエーションも豊富です。

下記は、Raytheonの50CD6Gです。

6V管の6CD6Gはヒータ電流2.5Vと大飯ぐらいですが、そのぶっといカソードの赤熱ぶりは、トリタンか?と思わせるほど明るく光ります。

さて、そんな6CD6ですが、これをオーディオ用に使用する場合、まず手っ取り早く使用したいなら3極管接続です。ただ、記載したように、スクリーングリッドの最大定格電圧が低いため、多くの方は躊躇してしまうでしょう。

さて、猫マタギ球とも言われる水平偏向管を前にして壁が立ちはだかりました。設計値を超えて電圧をかけていいものか、あるいは安い球なのでここは思い切ってやってみろ、壊れても安い球なのでいいじゃないか、と耐圧を超えた動作をしてみるか・・・。

当方は、後者を採用しました。つまり最大定格を無視した使い方です。水平偏向管で新境地を目指し、新しい球を発掘する方にかけてみます。

早速、6CD6Gの3極管接続特性を測定しましたので、掲載します。

ご覧のように計測時、プレート電圧約500V、プレート電流約180mA程度の電流が流れていますが、案外丈夫でびくともしませんでした。

ただし、注意してください、どの球もこれでいいわけではありません。レア管でこんなことはしないようにしましょう。欧州製の球は大電流を流すとすぐにエミッションが無くなる球もあります。

今回は、新境地を目指すべく、測定結果は広い範囲を見たいので、こんなに最大定格をオーバーしています。

その結果、この球、案外直線性がよく内部抵抗も低くてむしろ、オーディオに良さそうな特性だということがわかりました。

早速解析が必要ですね。v^^

ということで、上図に3定数を記載しましたが、詳しい方はこれを見てお気づきかもしれません、某有名直熱管にそっくりな特性です。内部抵抗が約1000Ω、μが4ほどの球と言えば・・・2A3が近いですね。

なんと、猫マタギの1つ、水平偏向管である6CD6Gの3結特性は2A3に類似した特性ということが判明しました。まさに新境地です。この球さらに好きになりました。

さて、アンプに仕立てた場合、どういう結果になるのでしょうか。

動作点がVp=280V、Ip=68mAのところで、RL=2.5kΩと3.5kΩで見てみました。一応プレートロスは、6CD6Gは15Wですが、本設計では19Wほどになっています。これも少しオーバーですが、気にしない気にしない。なお6CD6GAは、20Wまで可能です。

この場合出力は、5W弱となり2A3より出力は取れそうです。実は、実験用のアンプに装着して音は確認済みです。特性結果の通り、音はよかった印象です。お暇な方、高い球に懲りた方、手軽に良い音を試したい方、ぜひこんな球で新境地を目指してみるのはいかがでしょうか。

 

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TOKIN SIT 2SK182ESの特性測定

2022-09-03 20:04:14 | 真空管

以前、TOKINの縦型FET 2SK182ESを入手しましたので、特性を測ってみました。今回はいつもの真空管と異なり、驚きの特性だったので、掲載してみたいと思います。

縦型FET(以下、SIT)は、3極管特性を持つFETで一時期V-FETとして2SK60/2SJ18など流行った時期がありました。私もいくつか購入して持っていますが、持つだけでうれしくなり、実はまだ一度も使用していません。そうこうしているうちに世の中はパワー半導体の世界になり、大電力が扱えるV-FETが登場してきました。それがTOKINのSITで、カタログには、「高耐圧、高周波大電力、21世紀のトランジスタ」と記載されています。

TOKIN SITの主なラインナップの特性とそのアプリケーションをカタログから拾いました。

驚くことに、2SK182EでPt=500Wと単純計算で211の5本分はある特性であることがわかります。

さて、その測定結果ですが、下記のようになりました。普段、真空管ばかり相手しているので、測定環境は、アンペアレベルで測定できず、最大電流は300mAとなります。また、壊れると悲しいのでVdは250Vまでとました。

ご覧のようにVg=0Vでは、Vdがわずかな電圧で大電流が流れるという、ほとんど銅線に近い特性です。Vgにわずかに負電圧を加えるとようやく傾きが出てきますが、特性曲線がVgの変化に比例した間隔ではなく、なんだか直線性の良くない結果となりました。

下記にカタログにある2SK182の特性を掲載します。

こちらの特性もVsg=0Vでは、ほとんど銅線に近い特性ですし、Vds<300Vでは、Vsgが5V間隔にもかかわらず、特性曲線の間隔が均一ではないので、測定結果とほぼ似ているのかなと思います。

と、言うことで測定結果を掲載しましたが、ご参考になるかどうか。Vdを500Vぐらいまでかけた方がよかったかもわかりません。また機会があれば再計測してみたいと思います。

 

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814の三極管接続測定結果

2022-08-21 16:27:59 | 真空管

以前、PT15について3極管接続特性を記載しましたが、外形が似たような大きさの球で814というのがありますので、記載します。

大きさは写真の通り結構立派ですが、ベースはなんと”UY”で807等と同一です。なのでソケットは入手しやすく、211等と比べるとアンプ作りのコストは下がりそうです。

他の球との大きさ比較ですが、211と比較したのが下記の写真です。ご覧の通り、立派なグラスサイズであるものの、小さいベースのため尻すぼみなのが少し悲しい。アンプを作る際は、ベースを少し沈めて下側はあまり目立たないようにするのがよいかもしれません。

諸特性については、主な特性はここから確認ください。814は211等と同じくトリウムタングステンの明るく光る球なので、見栄えは良いかと思います。

さて、気になる3極管接続特性ですが、下記のような測定結果でした。

そしていつものように三定数を求めたいと思います。

図から、μ=7.5、rp=2100Ω、gm=3.5mSとなりました(計測・読取り誤差によるバラツキもありますので、おおよその値と思ってください)。

814を使用するメリットを考えてみましたが、主に下記のようなことがあると思います。

  1. ソケットは、807と同じUYタイプなので入手が容易で、しかもアンプ製作に失敗しても807/307Aなどに変更可能(つぶしがきく)。
  2. 大型&トリタンなので見栄えは良い。
  3. あまりメジャーな球ではないので、球自体はそれほど高価ではないと思われます。
  4. 3極管接続にした場合、結構使いやすい特性。

上記のようにメリットも多そうなので、次のアンプの候補にしたいと思います。

 

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