東京地裁の証言台に立った山田李沙被告(27)は、フィリピンを拠点とした特殊詐欺グループの一員だった。共謀して高齢者らからキャッシュカードを盗み、現金計約414万円を引き出したとして窃盗罪で起訴。公判の被告人質問では、転落の軌跡と「恐怖支配」の実態を赤裸々に語った。 風俗店勤務で糊口(ここう)をしのいでいた山田被告。将来への不安を感じ、ツイッター(現X)で闇バイトを検索したのが全ての始まりだった。コンタクトした「組織のリクルーター」に勧誘され、いきなり航空機のチケットが送られてきた。代金を負担してもらった後ろめたさからフィリピン行きを決断。仕事内容は「なんとなく『かけ子』だと思っていた」が、当初は1カ月で帰国するつもりだったという。
令和元年9月下旬、向かった先はマニラ首都圏の南東に位置するマカティ市内の廃ホテル。グループの首謀者、渡辺優樹容疑者(39)=窃盗罪で起訴、強盗殺人容疑などで再逮捕=が30人以上を差配していた。詐欺の電話を日本にかける練習を始め、早くも2日目に〝成功〟。現地の「受け子」や「出し子」が連携して現金を引き出した。「周りの人がすごく喜んでくれて、人生で初めて認められた瞬間だった」 予定の1カ月が過ぎたが、自分が組織に必要とされる存在だと感じ、残ることにした。詐取金は2千万円以上にも積み上がっていた。幹部からほめられ、プレゼントを渡され、犯罪という自覚がないまま架電をこなした。
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防衛省は、令和6年度末に陸海空自衛隊を一元的に指揮する常設の「統合司令部」を創設する。台湾有事や巨大地震など災害リスクに備えるため、平時から3つの自衛隊部隊を一体化する統合運用能力の強化とともに、米軍との調整の円滑化を図る狙いだ。従来の陸海空に、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域を加え、新たな戦い方に対応した領域横断作戦を実行する態勢の確立が急務になっている。同省は創設に向けた準備を加速させる。
常設の統合司令部は防衛省本庁のある東京・市谷に約240人態勢で発足させ、順次拡大する方針だ。トップには陸海空幕長と同格の統合指揮官を置き、その下に副司令官、幕僚長、「背広組」の事務官が就く司令官補佐官をそれぞれ1人ずつ配置する。
統合司令部の創設は、昨年12月に策定した国家安全保障戦略など安保3文書に明記されたが、構想は平成23年の東日本大震災を機に浮上した。
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