我が家の紅い椿の最後の一輪が明るい陽射しをその花びらに受けて
真っ赤にそして鮮やかに顔を染めている。
先日咲いたのが最後の一輪だと思い、夫婦で『今年は本当に
多かったね・・一体何百個咲いたのだろう・・』などと話していたの
だが再び思わぬプレゼントが・・・

もしや葉の奥の方にまだ蕾があるかもしれない・・と思い、
探し続けるが蕾はなく、既に小さな実があちこちに・・・
あらためて最後の一輪と向き合うと咲き誇っていた頃のもの
よりもかなり小さく、その姿は親から少し離れ、不安を持ちながらも
いろんな事に関心を持ち学校生活を楽しみたい・・・というような
希望に満ちた笑顔と紅い頬の小学一年生を連想させる。


こんな可愛い笑顔を見せてくれた最後の一輪に『ありがとう』の
気持を込めてシャッターを押した。
このまま(自然に)にしておくのもいいが「ぽとっ」と地面に落ちて
しまうのは可愛そうなのでしばらくの間は明るい外の空気をいっぱい
吸わせた後、枝を切り家の中で対面を続けることにしよう。
これが最後の一輪か・・と考えると・・ふと、子供の頃に読んだ
(教科書にも載っていたと思うが)『最後の一葉』を思い出した。
この椿に対するイメージとは全く違うものだが『最後の・・・』
という言葉が頭の中を駆け巡り『最後の一葉』に結びついたのかも
しれない。
あの物語を読んで子供心に命の儚さやそれ故に最も大切に
しなければならないことが頭にも胸にも刻み込まれたのだと思う。
画家を目指すあの二人の少女と年老いた画家、それぞれの
心境の変化や自己犠牲のような悲しくも美しい姿・・・
もう一度・・・今度は原作を読んでみたいと思った。