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忘れえぬ女-(その5 再会)

2014-11-18 17:26:37 | 小説
その後一ヵ月くらい経ったころ、ゆみから勤務中の達也に電話が入った。
「高津駅に居ます。出て来れませんか」
「五時半に行けると思います」と勤務中でもあり、事務的に応対した。

 残念ながら、約束の時間までに仕事のケリがつかず、ゆみには申し訳なかったがそれ以外の連絡手段がなく高津駅の電話に呼び出し遅れる旨を伝えた。
 遅れて待合室に入るとゆみは長椅子に掛けて新書本か文庫本を読んでいた。
丁度夕食時間になっていたので高津川沿いの開店して間もない古民家風のレストランで食事をとることにした。
 電話での気不味いやり取りの後だけに会話もスムーズにいかなかった。
ゆみは出始めの”みかん”を薦めるなど気遣ってくれた。
その日は打ち解けずに終わってしまったが次回の約束はできた。

 その後は、主に退社後ゆみの勤務地に近い地域で食事をしたり、ボーリングをしたりして互いの理解を深めていった。ボーリングはゲームとしての楽しさも加わり打ち解けやすく、高得点が出たときなど自然と握手が出来るまでになっていった。
 しかしながら、まだゆみに対する愛おしいという気持ちが芽生えなかったためか、どんな会話をしたのか思い出せない。多分お互いのこれまでの生い立ちや家庭環境、職場環境、人生観などを話題にしていたものと思われる。

 ゆみは達也と会うときも職業柄落ち着いた服装ばかりで、若い女性特有の華やかさがなかった。同じ職業でも破談になった前の彼女は東京の大学を出て未だ二年目だったので、都会の雰囲気と華やかさを持っていたのに。
 その頃の達也は自分のどちらかと言うと地味な性格と対照的な快活で活発な女性に魅力を感じていた。
 ゆみは職業柄からか、真面目で奥ゆかしく賢い女性で、口数も多くなく面白いといった感じはなかった。
 達也は自分が不細工の上猫背で格好が悪いのを自覚していて、男は外見で無く頭と心だと強がりを言って、さらには服装も地味なものを好んでいた。

 然るにゆみに好意を抱き始めると身勝手にもゆみには外見も要求してしまい、ゆみを自分好みの女に変身させたい誘惑に駆られた。
 達也はスタイルが良いゆみの服装を変え、外見上も素晴らしい女性にしたいと思った。
そこで、地元から離れたN市のデパートへ連れて行き、店員に頼んで服装と色をガラッと変てみたかった。そして、知った人と出会う虞のない街でミニスカートを履かせて二人で歩いてみたかったが、実行に移せなかった。

 ゆみもまた、達也の外見を気にしていたのかも知れない。
と言うのは、ゆみが達也の誕生日に赤系のネクタイをプレゼントしてくれた。
当時の達也は「ゆみさんにしては大胆なチョイスだな」と感じていたが、今思えばゆみは達也の外見に物足りなさを強く感じていたのかも知れない。


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