食品のカラクリと暮らしの裏側

食品の安全・安心が総崩れ、また政治・社会の矛盾や理不尽さも増大
暮らしの裏側の酷さやまやかし、危険性・不健全さに迫る!

作家・真山仁氏◇コロナ禍の東京五輪開催とは「自国民の命を犠牲・安売りした政府」のこと/東京五輪の危うさR8-8

2021年08月24日 | 東京五輪の危うさ
Oiympictp2 少数派シリーズ/東京オリンピックの危うさVOL.116
ROUND8 コロナ禍・猛暑下の東京五輪開催の過ち検証編 8
作家・真山仁氏◇コロナ禍の東京五輪開催とは「自国民の命を犠牲・安売りした政府」のこと

Sindg8olmSindg8olmb

■五輪は「安全と安心の確保」が開催の前提だったが安全の根拠を明示しないまま断行した
毎日新聞の記事を活用しました/始まれば、日本中が熱狂して、反対していたことなんて忘れる――。IOC(国際オリンピック委員会)幹部や放映権を握るテレビ局の経営者などが、東京五輪開幕前にそう嘯(うそぶ)いていた。そして、彼らの「予言通り」、熱狂のうちに五輪は、閉幕した。だから「東京五輪は、成功だった」という認識は、間違っている。五輪は、いつ、どこで開催しても、観衆を熱狂させる。極論を言えば、バグダッドでやろうがパリでやろうが、夢中になって応援しただろう。問題なのは、「この時期に、東京で、五輪を開催した」ことだ。無観客で行われたため、開催国であるにもかかわらず、テレビの前で観戦するしかなかった。一方で、「封じ込める」はずの新型コロナ感染は大爆発した。1日当たり1300人だった東京都内の新規感染者数は、開会と同時に急拡大。4000人、5000人と増えていった。

IOCや政府は、「五輪とコロナは無縁」というが、根拠はない。いずれにしても、東京で、新型コロナウイルス感染者が爆発的に増えたことは、事実だ。五輪は、「安全と安心の確保」が開催の前提だったが、安全の根拠を明示しないまま断行した。そもそも「安全と安心」の概念は、データの裏付けで「安全」を証明した上で、それだけでは人々を説得できないから、責任者が「安心してください」と誠意を示して共感を得るという両輪があって成り立つ。しかし、新型コロナ感染が広がって開催が危ぶまれても、組織委員会は、データ的な「安全」をなんら示さず、スローガンのように「安全安心」を連呼しただけだ。

■日本人は自分たちの命や国を守ることの大切さを忘れてしまったことをしっかり検証すべき
五輪をここまで強行した理由は、何なのか。招致を決めた時に掲げた「復興五輪」、「おもてなし」は、忘却の彼方(かなた)だ。そもそも「おもてなし」とは、絶対的な安全を担保して初めて成立するものだと考えれば、完全に約束を破っている。また、安倍前首相が言い出し、菅政権となってから新たに掲げられた「コロナに打ち勝った証し」に至っては、「大嘘(おおうそ)つき!」と言うしかない。あえて成果を上げるとしたら、日本政府が、外圧にあまりにも弱いと露呈した点だろうか。その弱さは、国民の命を犠牲にするほど酷(ひど)いものだ。開催ギリギリまで、世界中のメディアが「日本は、なぜ傲慢なIOCと闘わないんだ!」と訴えたが、黙殺された。国家とは、国民の命と国益を守るために存在する。それを、日本は完全に捨て去ってしまったとしかいいようがない。

では、国民の方には問題はなかったのか。私は定期的に学生と社会問題を議論する自主ゼミを主宰している。五輪開催直前に学生から要望があり、開催是非を議論した。その時、多くの学生が「国際社会に、一度行うと約束したのに、自国の都合でやめるわけにはいかない」と発言した。「自国民の命を犠牲にしてまで守るべき国際的な約束なんてないのでは?」と反論すると、彼らは驚きながらも納得した。いつしか、日本人は自分たちの命や国を守ることの大切さを忘れてしまったのか。だとすれば、この深刻な問題をしっかり検証すべきかもしれない。菅首相は、長崎の原爆慰霊祭後の会見で「開催国としての責任を果たして、無事に終えることができたと思っています」と述べた。我々は、この言葉に異議を唱え、菅首相に自らの責務を思い出してもらわなければならない。さもないと、今後も、日本人の命を、日本政府は安売りするだろう。

▽プロフィール 真山仁(まやま・じん)氏
1962年、大阪府生まれ。新聞記者などを経て2004年に『ハゲタカ』で小説家デビュー。近著に『トリガー』『プリンス』など。

投稿タイトル付けは、新聞の原題・原文に基づいて投稿者が行ったものです。

■投稿者の文章|感染爆発はまさしく自国民の命を犠牲・安売りしたことの証明
いくつかの調査では、約6割の方が「東京五輪を楽しんだ」ようだ。しかし今号の記事テーマのように、コロナ禍における五輪強行開催について、菅首相と現政権が「自国民の命を犠牲・安売りした」と思われている方も大勢いるだろう。 現に、五輪期間中から感染者数が急激に伸び出した。菅氏が開催を煽ったため、国民の緊張感が緩み徒(いたずら)に感染を増やしたのだ。今になって慌てて緊急事態とまん延防止対象県を増やし、やれワクチンだ、抗体カクテル・酸素ステーションだとぬかしている。何度も書くが、五輪を開催すれば確実に感染爆発が起こると尾身会長や感染症専門家が繰り返した。つまり菅氏は己の政権欲のために、まさしく自国民の命を犠牲・安売りしたことになる。思えば官房長官時代には、穏やかな”令和おじさん”ともてはやされたが、とんでもない「冷徹な男」と国民の多くが知った。五輪の熱意に反してコロナ対策のやる気のなさは、さらに「国民のことを思っていない」と認識しただろう。こんな政権は倒れるべき。それどころか選挙で自公政権を叩かねば、コロナ収束はなしえない。五輪開催の是非を通り越した論議であって、菅氏が招いた医療逼迫・医療崩壊は深刻だ。

Sankoub
次号/中島岳志教授◇東京五輪を終えた日本は坂口安吾の「堕ちる道を堕ちきる」ほかない
前号/吉見俊哉教授◇64年五輪神話の呪縛・開会式の出来は経てきた失敗の連鎖を象徴する

Tpjw06b3020228079

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゲンダイ紙◇医療崩壊でも「野... | トップ | ◆東京五輪関連「パラ反対」の... »
最新の画像もっと見る

東京五輪の危うさ」カテゴリの最新記事