少数派シリーズ/政治情勢
牧原出教授(菅政権評)1◇コロナ対策は官邸主導型のトップダウン政治と相性が悪い
■菅首相のコロナ対策で見えたこと「官邸に感染症対策に詳しい政治家がいないからワクチン一辺倒に」
牧原出教授の毎日新聞インタビュー記事・2回に渡りご紹介します。8.31付夕刊/菅義偉政権の新型コロナウイルス対策が、振るわない。感染者は全国で爆発的に増えるが、有効な方策が打てずにあえいでいる。一体、どうしてか。「第2次安倍晋三政権から続く『官邸主導』型の政治が、根詰まりを起こしている。政治スタイルの課題が、菅政権で一気に噴出した」と指摘するのは、行政学が専門の東京大教授・牧原出さん(53)だ。その意味するところは-。「今の菅首相は『ワクチン接種を進める』としか言わないですよね。でも、もはやそれで事態が解消する段階ではないですし、ペーパーを棒読みするように話されても、国民に首相のメッセージは届きません」。
牧原さんは、菅政権への苦言から切り出した。菅首相を中心とする官邸主導の政治のつまずきは、どこにあるのか。記者が尋ねると、牧原さんは、まだ「官僚主導」型の政治だった55年体制の自民党政権時代の対応と比較しながら、こう解説した。「官僚主導の時代なら族議員が活躍したでしょうね。新型コロナの感染症対策なら、厚生省(当時)の官僚が関心のある族議員に現場のいろいろな意見を持ち込んで、政策に反映させようと動いたでしょう。でも集権型の今の官邸主導の政権では、族議員の意見など反映されません。全部シャットアウトしていった上に、官邸に感染症対策に詳しい政治家もいないからワクチン一辺倒になってしまう」。
■今の官邸主導の政治スタイルではコロナ対策など内政分野に機能しない
官邸主導型の政治の特徴は、内閣機能を強化し、首相とその補佐集団がスピーディーな政策決定をすることである。第2次安倍政権時代(2012~20年)は、その強力なリーダーシップで次々と政策を打ち出した。「アベノミクス」と銘打たれた経済政策と、安全保障関連法を成立させるなどの外交政策が、その典型だ。「安倍1強」とも言われた政権について、官邸主導型の政治スタイルが完成し、政治改革の一つの到達点と称されることもあった。「安倍首相は官僚主導の政治ではできない思い切った政策を取った。政治主導の成果といって間違いない」と牧原さんは評価する一方で、「それが有効だったのは、外交と経済に限られていた」とも指摘する。
「安倍政権時代には見過ごされていましたが、地方創生や1億総活躍、西日本豪雨災害など内政の問題は、かけ声は勇ましいものの有効な政策を取れていませんでした。住民の意向を丁寧にくみ取り、地方自治体との連携が求められる内政の問題は、トップダウンの官邸主導型の政治とは、相性が悪いんです」。今、新型コロナを巡っては感染者の数は一向に減らない。ワクチンは不足し、緊急事態宣言を出しても人の流れが止まらない。ウイルスが全国に広がる一方、突きつけられた課題は地域の実情ごとに変化する。菅政権では、官邸を中心とした集権的な政治主導が機能しない内政の分野で問題が発生した--というのが、牧原さんの見立てだ。たしかに、昔なら、地方選出の国会議員が、知事や地方議員と情報交換して地方の声を吸い上げる役割を担ったかもしれない。だが、今の官邸主導の政治スタイルでは、そうした手法はなかなか生かされない。<次号に続く>
<プロフィール> 牧原出(まきはら・いづる)さん
1967年、愛知県生まれ。東北大教授を経て東京大先端科学技術研究センター教授。専門は行政学、政治学。著書「内閣政治と『大蔵省支配』――政治主導の条件」(中央公論新社)でサントリー学芸賞。他にも「『安倍一強』の謎」(朝日新書)など。
投稿タイトル付けは、新聞の原題・原文に基づいて投稿者が行ったものです。
投稿者からのひと言/安倍前首相のスタイルを、そのまま受け継いだのが菅政権。従って多くの有識者の方が仰るように、安倍・菅政権を一体として捉えるべきだ。2012年当初の安倍首相の“絶大な権力”の下に、その代名詞となった「官邸主導」が強くなった。その強行政治が、驕りと国民無視の”恐慌政治”に置き代わった。様々の弊害が指摘されたが無視し、なれの果てがコロナ対策の「無策」。さらには「菅流人事」によって、自民党議員や官僚・中堅役人が物を言わず、まともな仕事をしなくなった(物言えば唇寒し秋の風)。結局、官邸以外に物を言う人がいなくなり、国民の声は届かず。自滅して、安倍前首相と同じく「政権投げ出し」。飲食業の方は、政治家は苦しくなればすぐやめられる。でも俺たちはどんなに苦してもやめられぬ、やめらた死ぬことと同じ。この叫びも、菅首相や官邸には届かない。官邸ばかりに従い国民の声を聞かねば、追い詰められて無様な格好で辞めざるを得なくなるを菅首相は安倍氏から学んでいなかった。辞任に追い込まれ苦し紛れに「コロナ対策に専任する(専念の言い間違え)」と言ったが、今さらそんな気はないでしょ。菅首相の持論のように、国民は「自助」で対策しなければならないようだ。
後編|牧原出教授(菅政権評)2◇コロナ対策は官邸集中主導では機能せず・地方の意向重視を
牧原出教授(菅政権評)1◇コロナ対策は官邸主導型のトップダウン政治と相性が悪い
■菅首相のコロナ対策で見えたこと「官邸に感染症対策に詳しい政治家がいないからワクチン一辺倒に」
牧原出教授の毎日新聞インタビュー記事・2回に渡りご紹介します。8.31付夕刊/菅義偉政権の新型コロナウイルス対策が、振るわない。感染者は全国で爆発的に増えるが、有効な方策が打てずにあえいでいる。一体、どうしてか。「第2次安倍晋三政権から続く『官邸主導』型の政治が、根詰まりを起こしている。政治スタイルの課題が、菅政権で一気に噴出した」と指摘するのは、行政学が専門の東京大教授・牧原出さん(53)だ。その意味するところは-。「今の菅首相は『ワクチン接種を進める』としか言わないですよね。でも、もはやそれで事態が解消する段階ではないですし、ペーパーを棒読みするように話されても、国民に首相のメッセージは届きません」。
牧原さんは、菅政権への苦言から切り出した。菅首相を中心とする官邸主導の政治のつまずきは、どこにあるのか。記者が尋ねると、牧原さんは、まだ「官僚主導」型の政治だった55年体制の自民党政権時代の対応と比較しながら、こう解説した。「官僚主導の時代なら族議員が活躍したでしょうね。新型コロナの感染症対策なら、厚生省(当時)の官僚が関心のある族議員に現場のいろいろな意見を持ち込んで、政策に反映させようと動いたでしょう。でも集権型の今の官邸主導の政権では、族議員の意見など反映されません。全部シャットアウトしていった上に、官邸に感染症対策に詳しい政治家もいないからワクチン一辺倒になってしまう」。
■今の官邸主導の政治スタイルではコロナ対策など内政分野に機能しない
官邸主導型の政治の特徴は、内閣機能を強化し、首相とその補佐集団がスピーディーな政策決定をすることである。第2次安倍政権時代(2012~20年)は、その強力なリーダーシップで次々と政策を打ち出した。「アベノミクス」と銘打たれた経済政策と、安全保障関連法を成立させるなどの外交政策が、その典型だ。「安倍1強」とも言われた政権について、官邸主導型の政治スタイルが完成し、政治改革の一つの到達点と称されることもあった。「安倍首相は官僚主導の政治ではできない思い切った政策を取った。政治主導の成果といって間違いない」と牧原さんは評価する一方で、「それが有効だったのは、外交と経済に限られていた」とも指摘する。
「安倍政権時代には見過ごされていましたが、地方創生や1億総活躍、西日本豪雨災害など内政の問題は、かけ声は勇ましいものの有効な政策を取れていませんでした。住民の意向を丁寧にくみ取り、地方自治体との連携が求められる内政の問題は、トップダウンの官邸主導型の政治とは、相性が悪いんです」。今、新型コロナを巡っては感染者の数は一向に減らない。ワクチンは不足し、緊急事態宣言を出しても人の流れが止まらない。ウイルスが全国に広がる一方、突きつけられた課題は地域の実情ごとに変化する。菅政権では、官邸を中心とした集権的な政治主導が機能しない内政の分野で問題が発生した--というのが、牧原さんの見立てだ。たしかに、昔なら、地方選出の国会議員が、知事や地方議員と情報交換して地方の声を吸い上げる役割を担ったかもしれない。だが、今の官邸主導の政治スタイルでは、そうした手法はなかなか生かされない。<次号に続く>
<プロフィール> 牧原出(まきはら・いづる)さん
1967年、愛知県生まれ。東北大教授を経て東京大先端科学技術研究センター教授。専門は行政学、政治学。著書「内閣政治と『大蔵省支配』――政治主導の条件」(中央公論新社)でサントリー学芸賞。他にも「『安倍一強』の謎」(朝日新書)など。
投稿タイトル付けは、新聞の原題・原文に基づいて投稿者が行ったものです。
投稿者からのひと言/安倍前首相のスタイルを、そのまま受け継いだのが菅政権。従って多くの有識者の方が仰るように、安倍・菅政権を一体として捉えるべきだ。2012年当初の安倍首相の“絶大な権力”の下に、その代名詞となった「官邸主導」が強くなった。その強行政治が、驕りと国民無視の”恐慌政治”に置き代わった。様々の弊害が指摘されたが無視し、なれの果てがコロナ対策の「無策」。さらには「菅流人事」によって、自民党議員や官僚・中堅役人が物を言わず、まともな仕事をしなくなった(物言えば唇寒し秋の風)。結局、官邸以外に物を言う人がいなくなり、国民の声は届かず。自滅して、安倍前首相と同じく「政権投げ出し」。飲食業の方は、政治家は苦しくなればすぐやめられる。でも俺たちはどんなに苦してもやめられぬ、やめらた死ぬことと同じ。この叫びも、菅首相や官邸には届かない。官邸ばかりに従い国民の声を聞かねば、追い詰められて無様な格好で辞めざるを得なくなるを菅首相は安倍氏から学んでいなかった。辞任に追い込まれ苦し紛れに「コロナ対策に専任する(専念の言い間違え)」と言ったが、今さらそんな気はないでしょ。菅首相の持論のように、国民は「自助」で対策しなければならないようだ。
後編|牧原出教授(菅政権評)2◇コロナ対策は官邸集中主導では機能せず・地方の意向重視を