少数派シリーズ/東京オリンピックの危うさVOL.94
ROUND7 国民の命を守るため東京オリンピックの中止を!編 19
ハゲタカ著者・真山仁氏コラム◇五輪中止を!命を守る決断は顰蹙を買ってでも政治家の役目
■真山仁氏へのインタビュー記事|この国は戦後、国民の命を守ることを最優先に考えてこなかった
―今夏の開催へ、聖火リレーや五輪のテスト大会が粛々と行われています。
「まさか東京五輪はやらないよね」。そう思いながら中止の決定をずっと待っていますが、開会式(7月23日)までどんどん日数が減ってきました。「オリンピックが始まってしまえば国民は熱狂する、このまま(本番に)なだれ込んでいけば、もう後戻りできないだろう」。きっとそんな戦略で突き進んでいるのでしょう。
―いま開催国に求められていることは?
開催することによって、たった1%でも感染者が出る可能性があるのなら、止めるのがホスト(主催)国の義務です。その判断は、いまや菅首相にかかっていると思います。本来、政治家はひんしゅくを買ってでも、盾となって国民の命を守るための決断をするべきです。しかし現実は当事者意識が低く、腹のくくり方が弱すぎます。だいたい国民投票法改定案を通している場合ではありません。そもそもこの国は戦後、国民の命を守ることを最優先に考えてこなかった節があります。高度経済成長期には公害に目をつぶってきました。
2011年の東日本大震災を見てもそうです。原発事故から10年たっても福島の「帰宅困難地域」をはじめ、被災地はほとんど復興していません。「復興」とは、以前の状態よりも豊かになることを表します。そういう状況下でアリバイのように聖火リレーや野球とソフトボールなどの数試合をすることで「復興五輪」と言えるのか。
■若者たちのためにも「コロナ禍に無理やり五輪を開いた情けない国だね」を避けたい
―大会組織委員会は「開催には『安心・安全』が第一」と繰り返すばかりです。
「安心」は人の心の問題ですが、「安全」は具体的に数値化するべきもの。ところが組織委員会は「安心」を強調するばかりで、数値を出して「安全」を証明していません。海外からも開催を疑問視する声が出ているなかで強行すれば、この国が将来にわたって批判されるのが目に見えています。「コロナ禍に無理やり五輪を開いた情けない国だね」と。若者たちのためにも、それだけは避けたい。
―菅首相に中止を決断させるにはどうしたらいいのでしょうか。
肝心なメディアは反対意見が載るものの歯切れが悪く、前面には出ていないのが嘆かわしい。新聞社が五輪のスポンサーに組み込まれて、文句を言わせないしくみをつくってしまっているかのようです。一方、世論調査では、感染拡大が止まらない昨年後半から一貫して「反対」が上回っています。それなのにずっと結論は先延ばしにされています。
―一部の選手からは苦悩と懸念の声があがりはじめています。
間違っても、大会参加の是非を選手個人の判断に委ねてしまってはなりません。多くの選手たちが「参加しない」と表明すれば、中止せざるをえなくなるかもしれません。でも、五輪をゴールに定めている選手に「命の危険を感じるから辞退します」と言わせるのは、あまりにも酷です。コロナ禍でオリンピックを無理に開くがゆえの苦しさから解放してあげないで、どこが「アスリート・ファースト」といえるのでしょうか。やはりここは、「政治」が決断すべきです。
<プロフィール> 小説家・真山仁氏(まやまじん) 1962年大阪府生まれ
著書「ハゲタカ」「それでも、陽は昇る」など。
投稿者によって、タイトル付けを行いました。コラム・インタビュー記事を載せ、投稿者のコメントは割愛します。
次号/松尾貴史氏コラム◇東京五輪の開催は日本の堕落を世界に見せつけることになる
前号/東京五輪開催まで50日を切り最後は菅首相の判断・責任で「中止」を決断せよ
ROUND7 国民の命を守るため東京オリンピックの中止を!編 19
ハゲタカ著者・真山仁氏コラム◇五輪中止を!命を守る決断は顰蹙を買ってでも政治家の役目
■真山仁氏へのインタビュー記事|この国は戦後、国民の命を守ることを最優先に考えてこなかった
―今夏の開催へ、聖火リレーや五輪のテスト大会が粛々と行われています。
「まさか東京五輪はやらないよね」。そう思いながら中止の決定をずっと待っていますが、開会式(7月23日)までどんどん日数が減ってきました。「オリンピックが始まってしまえば国民は熱狂する、このまま(本番に)なだれ込んでいけば、もう後戻りできないだろう」。きっとそんな戦略で突き進んでいるのでしょう。
―いま開催国に求められていることは?
開催することによって、たった1%でも感染者が出る可能性があるのなら、止めるのがホスト(主催)国の義務です。その判断は、いまや菅首相にかかっていると思います。本来、政治家はひんしゅくを買ってでも、盾となって国民の命を守るための決断をするべきです。しかし現実は当事者意識が低く、腹のくくり方が弱すぎます。だいたい国民投票法改定案を通している場合ではありません。そもそもこの国は戦後、国民の命を守ることを最優先に考えてこなかった節があります。高度経済成長期には公害に目をつぶってきました。
2011年の東日本大震災を見てもそうです。原発事故から10年たっても福島の「帰宅困難地域」をはじめ、被災地はほとんど復興していません。「復興」とは、以前の状態よりも豊かになることを表します。そういう状況下でアリバイのように聖火リレーや野球とソフトボールなどの数試合をすることで「復興五輪」と言えるのか。
■若者たちのためにも「コロナ禍に無理やり五輪を開いた情けない国だね」を避けたい
―大会組織委員会は「開催には『安心・安全』が第一」と繰り返すばかりです。
「安心」は人の心の問題ですが、「安全」は具体的に数値化するべきもの。ところが組織委員会は「安心」を強調するばかりで、数値を出して「安全」を証明していません。海外からも開催を疑問視する声が出ているなかで強行すれば、この国が将来にわたって批判されるのが目に見えています。「コロナ禍に無理やり五輪を開いた情けない国だね」と。若者たちのためにも、それだけは避けたい。
―菅首相に中止を決断させるにはどうしたらいいのでしょうか。
肝心なメディアは反対意見が載るものの歯切れが悪く、前面には出ていないのが嘆かわしい。新聞社が五輪のスポンサーに組み込まれて、文句を言わせないしくみをつくってしまっているかのようです。一方、世論調査では、感染拡大が止まらない昨年後半から一貫して「反対」が上回っています。それなのにずっと結論は先延ばしにされています。
―一部の選手からは苦悩と懸念の声があがりはじめています。
間違っても、大会参加の是非を選手個人の判断に委ねてしまってはなりません。多くの選手たちが「参加しない」と表明すれば、中止せざるをえなくなるかもしれません。でも、五輪をゴールに定めている選手に「命の危険を感じるから辞退します」と言わせるのは、あまりにも酷です。コロナ禍でオリンピックを無理に開くがゆえの苦しさから解放してあげないで、どこが「アスリート・ファースト」といえるのでしょうか。やはりここは、「政治」が決断すべきです。
<プロフィール> 小説家・真山仁氏(まやまじん) 1962年大阪府生まれ
著書「ハゲタカ」「それでも、陽は昇る」など。
投稿者によって、タイトル付けを行いました。コラム・インタビュー記事を載せ、投稿者のコメントは割愛します。
次号/松尾貴史氏コラム◇東京五輪の開催は日本の堕落を世界に見せつけることになる
前号/東京五輪開催まで50日を切り最後は菅首相の判断・責任で「中止」を決断せよ