今日、駅近くの書店で『SAPIO』誌(小学館)に掲載された小林よしのり氏「ゴーマニズム」宣言を少し立読みした。
電車の時間が迫っていたのでざっと読んだだけだが、読んだ部分は、要するに男系皇統継承維持の為に戦後臣籍降下した旧宮家を皇籍復帰させるということは絶対無理という論だった。
小林氏は、仮に旧宮家から天皇が出るとすると過去の天皇との繋がりを見出すには600年も遡らないといけないという事実を挙げ、従って「天皇との血が薄い」旧宮家の方々が天皇になることを国民が納得するのは難しい旨を語っていた。
全く同意出来ない。
神話的時代から現代に至るまで貫かれてきた、天皇となる為の生物学的条件は“父親、その父親、またその父親と男系を辿っていくと初代神武天皇に行き着く”という一点のみである。今上陛下から数十代前までの最近の天皇との血縁が薄い濃いは全然関係ない。
600年間皇室と全く無関係だった庶民だというならまだ少しは話がわかるが、旧宮家の方々は数十年前までは皇族であった方やその子孫であり現在でも皇室とお付き合いを保たれている。国民に理解が得られないということはない。
この何十年か普通の日本国民として過ごされていたからといっても、それは皇籍復帰の障害にはならない。天皇陛下も他の皇族の方々も生物学的には我々庶民と全く同じ人間だ。何か特別な身体的特長や或る種の超能力みたいなモノをお持ちというわけではない。“普通の日本国民としてちゃんと過ごされている”ということは皇籍復帰するに十分な資格である。
また、小林氏は、際限なく皇族が増えては困るという理由で戦前に制定された“宮家の一部を将来自動的に臣籍降下させる”という或る規則を挙げて、活発に活動されている有名な竹田恒泰氏を始めとする旧宮家のある部分の方々は、現に実施された臣籍降下が無かったと仮定してもやはり既に宮家ではなくなっていると言う。そしてGHQが皇室予算を削らせ宮家の臣籍降下に追い詰めたことは事実であるがその「陰謀」というわけではないとする。
いったい何を言いたいのか。私にはさっぱり理解不能だ。
戦前に”皇族が増えすぎないように”という理由で制定されたその規則が仮に戦後も有効だったと仮定しても、制定時と正反対の心配を皆がし始めたらその規則は当然廃止または休止されたはずではないか。それに、GHQが圧力をかけた事実が厳然として有るのに陰謀はないと何故言えるのか。
小林氏は、悠仁親王殿下が成人されても殿下と結婚し男子を産むことを期待される大変な立場につきたがる女性がいるはずはない旨を断言していた。
何でそんなことが言いきれるのか。そういうプレッシャーに耐えてでも殿下を愛し皇太子そして天皇の妻となりたいと考える女性はやはり居ると考えるのが普通の感覚だろう。
(他にもいろいろ書いてあることがあったが、読む時間が無かった。興味の有る方はSAPIO誌をお読み頂きたい。)
以前小林氏の『天皇論』を読んだ限りでは、氏は”男系の伝統が維持できるならそれが良いが仮に女系天皇が出現しても天皇の本質は変わらないから失望はしない”という穏健な女系天皇容認論者だったはずだ。
いつのまにか、それを通り越して奇妙な理屈を振り回す”男系維持反対論者”になってしまったのだろうか。
名著『戦争論』で私の他多くの国民を戦後民主主義教育の洗脳から開放してくださった小林よしのり先生。いったい、どうしてしまったのだろうか。