児童文学作家を目指す日々 ver2

もう子供じゃない20代が作家を目指します。ちょっとしたお話しと日記をマイペースに更新する予定です。

クリスマスの種明かし

2023-12-12 | 物語 (電車で読める程度)
「ねぇ、せんせ。」

冬期講習には少し早い時期にも関わらず、
こんなところで椅子に座らされている小学生を不憫におもった。

「アタシ、クリスマスプレゼントがなにかもう知ってるんだぁ。」

そして、こちらが応える間もなく話し続けた。

「100ピースのパズル。昔、あなたが好きでやってたでしょってお母さんがいうの。」

肩を落として言うこの子になんて言葉が丁度いいんだろうか。

いい大人のふりをして母親の気持ちを酌むように諭すべきなんだろうか。

結局、「それはやだね」と言ってしまった。


こんな家庭教師に払うくらいならさってね。

【おわり】

通過

2023-12-12 | 物語 (電車で読める程度)
まじで、ありがとうございました。

彼のことはなにも知らなかった。

この光景は二度目らしいのだが、

さっぱり身に覚えがなかった。

高い身長を少し屈めて、

歩く彼のことなんて

知り合いから楽器を貰ったことと

名前が変わったことくらいだろうか。

通りすがりの私なんかがおこがましいが

彼の時間のうちなにか役に立てばいいとおもった。

たとえば

風邪かと訊ねて返ってきた答えが

いやこれ、せいしんの薬っす。なら

その時どうしてもっと気の利いたことが言えなかったんだろうか。

それからわざわざ手紙を寄越してくれた彼はそれとは別に私達ではない人へ宛てた手紙があった。

彼にとって、その出会いはとてもとても大きなものだったんだろう。

よかった。

そんな日々だ。



【おわり】