原稿用紙10枚を書く力 (だいわ文庫) | |
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大和書房 |
この人の本で私の書棚にあるものを拾い上げてみると、読書力(岩波新書二〇〇二)、原稿用紙一〇枚を書く力(だいわ文庫二〇〇七)、誰も教えてくれない人を動かす文章術(講談社現代新書、二〇一〇)がある。その他にも教育に関する本や歴史に関するものもある。マスコミにも登場する有名人でもあり、一般向けのブログをはじめた時に本のタイトルに惹かれて、書店で思わず買ってしまったものだ。氏の記す文章の書き方に関する示唆は、ほとんど英語でしか書かない論文の執筆にも十分通ずる。そのことは後でまた記すとしよう。
斉藤氏の示唆は、学界などで書かねばならないメッセージやレジュメ、大学における会議のための文書、科学研究費の申請書などの全てに通ずるので大変参考になる。時々、読み返してはいまでも参考にさせていただいている。
氏の示唆に従って、私が前記の文章術三部作から使わせていただいている3つのことがらについて記そう。
まず前提として、文章の説得性は、その技巧ではなく中身であり、独創のメッセージがそこにあるかどうかによるという。当たり前のようであるのだが、日本語のへたくそな私としては大変勇気を与えられる。
技巧ではなく中身重視は、絵画世界において、フランス印象派がそれまでの写実世界を打ち破ったことに似ており、印象派の絵を当時の常識的な絵画技巧の世界では誰もうまいとは認めなかったことと同じだと言うのだ。なんとも小気味好く勇気づけられる一言だろうか。
結論は、「文章は3の法則」ということだ(書く力,だいわ文庫)。
本を読む時は、その本から3つの事柄を引き出し、それらの関連を整理しておく。書く時も3つの部、3つの章、3つの節と階層を作り、エッセイ程度のものから大著に至るまで貫く。
文章は、3つのキーコンセプト(キーワード)をつなぐ3つの関係を整理すると必ずオリジナルな読書エッセイや、独創的なメッセージとなる。
そして著者の文章を特徴づける「文体」は、その文章を書く立ち位置によって決まるというのだ(「読書力」:岩波書店)。
つづく